violet shaking | ナノ


 


 mission.05



少しだけでええ。

前より俺を意識しててくれたなら何倍もの愛を君に捧げる。





mission.5 部活見学





「…………」

『……何よ阿呆面でこっち見て』

「いや、今日の弁当めちゃでかいなぁ思て……」



机の上にある名前の弁当は異様な存在感。

女の子が食べる量とは思へんほどでかいっちゅうのにそれが3段重なってる。

え、重箱?こないなもん持って来てる奴初めて見たわ!



『ママが、蔵の分も作るって張り切ってたんだよ』

「俺の分?」

『蔵の分なんて要らないのに迷惑な話よ』



名前のお母さんが俺の分まで作ってくれやなんて……

うわ、めっちゃ感動やん!
最近暑すぎて食欲減ってきたから今日の昼はビタミンジュースだけでええ思てたけど腹減ってきた!



『何でアタシが蔵の為にこんな重たいもの運ばなきゃいけないのよ、どうしてくれんの?』

「いただきます」

『ちょっと普通にシカトしないでよ』



なんや名前が言うてるけど生憎都合悪い事は聞こえへんねん。

今は目の前の輝いて見える弁当に食い付くのみや。



「はー…美味いわー…」

『……………』

「名前も早よ食べな昼休み終わってまうで」



昨日に引き続き美味い弁当に俺は幸せや。
ホンマ昨日水撒きして良かった。



『本当蔵って変わってる』

「へ?変わってるって?」



唐揚げを頬張る俺に、名前はほうれん草を取りながら言った。



『あんだけプリンスとかキャーキャー騒がれてるのにさぁ、』



ぷ、プリンス……。
俺がプリンス?そんなん初耳や。



『意外と普通っていうか…』

「何言うてんねん、俺もただの人間や。普通に決まってるやろ」

『そりゃ出来てるとこは出来てるけど本当普通。完璧すぎてもっと取っ付きにくいと思ってた』

「……………」



クラスメイトとしか接した事なかったし、なんて付け加えて。

んー、これはもしかしてええ感じ?
取っ付きにくいて思てたけどホンマは普通で楽しいねんな的な?

名前にはええとこしか見せたなかってんからそう思われてても仕方ないけど。せやけどどないしよー!1週間なんか言わんともうくっついてまうんちゃうん?アカン、ニヤける……



『でもやっぱ結構面倒臭いとこあるよね』

「お、お前な…………」



結局この落ちかい。
そない面倒臭い事言うた覚えなんかないっちゅーねん!



『だけど蔵は……』

「ん?」

『……何でもない』

「は?気になるやんそない中途半端にされたら」

『いいからさっさと食べて。もう片しちゃうよ』

「アカンって!まだ全然食べてへん!」



上手くはぐらかされた気もするけど、俺はそのまま触れんかった。

ただ。少しずつ、俺の事を知ってもらえてるんやなって思うと今の関係も間違いちゃうねんなって。





  □





「ほな行くでー!」

『テンション高いんだけど』



テンション下げてられるか!
名前が部活見に来るんやで!めっちゃ気合い入るわ。

俺は名前の手をグイグイ引っ張ってテニスコートへ向かう。



『ちょっと!手離してよ!』

「別にええやん。離したら帰りそうやし」

『ちゃんと行くから!痛いから離して!』

「そ、そら堪忍…」



痛い言われてパッと離す。

これで2回目や。手握って痛い思いさすの。俺アカンわ、名前の事になると力の加減も分からへんなるほど夢中になってしまう。



「この辺で見といてやー?此処やったらボールも飛んで来たりせえへんから」

『ハイハイ』



大義そうに返事するけど、ホンマに来てくれた事が嬉しくて。
俺はポンポン、と頭を軽く撫でた。



『だ、だから頭触らないでって!』

「やっぱ頭触ったら照れんねんな」

『うるさいっ!』

「めっちゃ可愛い」

『あーもうあっち行って!さっさと部活始めなよ!』

「、ククッ」



頭を触ると少し赤なる。
頭弱いんやなぁ。強気なんは変わらへんけど女の子ーな顔してて。それが俺にはたまらへんねん。癖になりそうやわ。



『え?名前やん!』

「、謙也」



せや、謙也驚かそう思てたんや。
見てみぃ、お前があれだけ言うてたのに名前が来たんやで。ビックリしたやろ!



『白石が連れて来たん?』

「せや。ええやろ?」

『まさか来るとは思わへんかったなー』



ホンマかー、と目を丸くしてる謙也に俺は満足やった。

俺の彼女が来てくれたんや、そう思われてんねんから嬉しいに決まってる。



『名前、お前がそないなキャラやと思わへんかったわ』

『いいでしょ別に』

『白石がそれだけ好きやっちゅう事やんなぁ』



え?ホンマに!?
俺が好きやから?名前、そうなん?

謙也の言葉に浮かれる俺、せやのに……



『謙也!』

『なんやねん』

『アタシ、許した訳じゃないからね』

『……分かってるわ…お前が厳しい事言うんもしゃーない、俺が悪いねんから…』

「…………」



何、この会話。

俺抜きで繰り広げられる意味深な会話。気になるのに、入っていけへん。
簡単に俺が踏み入れたらアカン様なその空気、名前と謙也の何とも言えへん切ない表情を眺めるしか出来へんかった……

お前等、どんな関係やねん……



『ほな着替えよ、白石行くで』

「あ、ああ…」

『蔵、早く行きなよ』

「……名前、お前謙也と仲ええねんな、」



気付いたら口走ってた。
遠回しにさっきの話はなんやって聞いてんのと同じや。
せやけどもろに質問は出来ひん…



『……仲良くなんか…』

「でも、『嫌い』」

「え、」

『謙也なんか嫌い…』

「名前……?」



謙也の背中を見つめる名前は泣きそうな顔してた。

嫌い

その言葉は反対の意味に聞こえるような、そんな気がして。
聞くんやなかったと激しく後悔した。





  □





それからの部活は上の空で、頭に浮かぶは名前と謙也の事ばっかり。

まぁ名前で呼び合ってるくらいやからそれなりに仲ええんかなとは思ってたけど、それ以上の関係やなんて誰が思う?

謙也には他の学校に彼女が居てるし、俺が名前と付き合い出したって言うた時も驚くだけで他に変な事は言うてへんかった。


考えても考えても、謎は分からへんままで。



「名前、帰ろか…?」

『うん、あ、メール来た。ちょっと待って』



携帯を取り出してメールを見る名前を前に、謙也の話をどう切り出そうかって考えてた瞬間。



「…嘘………」

『、どないしたん?』



顔を歪ませる。



『ごめん、今日は一緒に帰れない』

「は、名前、」

『謙也!!』

『、またなんや』

『話がある』

『話?せやったら今言うたらええやん』

『いいから来て』

「……………」



謙也を引っ張って行ってしまう名前。

急なその出来事に俺の頭はついていけへんかった。


名前、まさかお前……




謙也の事が好きなん……?





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