恋理由 | ナノ


 


 12.




謙也に説教される迄は腑抜け過ぎてて、引っ張られて来た場所さえも把握してへんかった。
顔を上げれば真上に太陽がある屋上やったのに陽の光りさえ遮って閉じこもってた俺は今なら痛いと思える。今日は雲も無く快晴で失恋には持って来いやんか。


「…やっぱり、あそこに居るんかな」


もう授業は1日分終了した時間やけど何となく彼女がまだ構内に居る様なが気がしてた。確信も無いけど、いつものあの場所、校舎裏に居るって…


「名前ちゃん!」

『!』

「やっぱり、此処に居ったんや…」

『っ、』

「待って!最後でもええから話し聞いてくれへん…?」

『…………………』


屋上から勢い良く階段を掛け降りて走れば、あの場所に彼女は居てくれた。それだけで、すれ違ってても繋がってる気になるのは図々しいんやろか…?


「昨日は、ごめんな。下手な事言うて傷付けてしもた」

『…謝って欲しいなんて思ってないから』

「それでもごめん。俺が勝手にジメジメ考えてる事より好きな女の子泣かせる方が格好悪いやんな…」

『し、白石君が好きなのは知り合う前のアタシで、顔だけなんだから別に気にする必要ない!っていうか自分でも分かってる!』


それに泣いてない、そう言いながら外方向く彼女の眼は赤くて瞼が心なし重い。いつもなら照れ隠しで外方向くけど、それに込められた本当の意味は、彼女が演技を出来ひんから、なんや。
あのお説教が無かったら俺はそれさえ気付けへんままやった。


「名前ちゃん、俺が名前ちゃんを好きになったキッカケは一目惚れやって言うたやんか」

『だから、何度も言わなくても本当のアタシがイメージと違うって分かってるってば!』

「うん…せやけど俺、お金第一でとんでもない事言う名前ちゃんも好きなんやで」

『もういいって何回言ったら分か―――、え…?』


謙也が教えてくれたから受け売りみたいになってしまうけど、俺自身そう思ってるのも事実やから。
キッカケは何でも良い、大事なんはそれから、今現在。


「昨日は後ろめたさばっかり先走って言葉も選べへんかったから、ほんまに申し訳無いと思ってる。せやけど結局、昨日も今も言いたかった事は、名前ちゃんと一緒に過ごしたいっちゅう事やねん」

『、なんで……』

「そら跡部クンの話し聞いて驚いたりもしたけど最後は楽しかったで1日が終わるんや。勝手や思われるかもしれへんけど、お金しか見えてへん名前ちゃんを見守ってあげたいってずっと思ってた。変に理由を考えてたから素直にそこから好きに繋がるまで時間掛かってしもたけど…」

『そ、そんな素振り全然だったし!』

「せやなぁ…俺は名前ちゃんから見て恋愛対象外やったやろうし、俺自身一目惚れは間違いやって思い込んでたから当然かもしれへん」

『…………………』


腑に落ちへん、彼女はそんな様子で俯いてしもた。
しゃーないやんな、俺が阿呆な事を口走った結果やねんから。理解して貰おうとは思わへん。ただ、ほんまは好きな事、これからも好きな事、それだけ伝えられたら……


『そう、だよ…』

「え?」

『アタシ、白石君タイプじゃない…恋愛対象なんかじゃない…』

「―――――うん」

『お金持ちじゃないし、顔が良い人は信用出来ない』

「うん」

『アタシの本性知っても最低だとか最悪だとか悪口言わないのも変だし、無茶な事言っても文句も嫌な顔しないのも可笑しい』

「はは、そうなんかな?」

『だから、アタシは学校で白石君を探す様になった』

「、ほんまに?」

『白石君なら何言っても良いって、嫌われないって、思ってた』

「……間違いやないで?」

『だけど嫌われない方が可笑しいし、謙也と話してると途中で白石君の様子が変でやっぱり昨日、本音で嫌いなんだって気付いて、』

「…………………」

『これ以上嫌われたくないって、白石君から離れた…のに、』

「…のに?」

『白石君が好きだとか言うから、訳分かんない!』


途端、彼女は黒い眼を揺らしてボロボロと涙を落としながら食い縛る様な顔でこっちを睨む。
それが愛しくて、愛し過ぎて、堪らず腕の中へ閉じ込めた。小さく震える肩は知り合う前も後も気付けなかったくらいに華奢で儚い。


『白石君の所為で他の人にアタシの本性バレちゃうし、悪魔とか言われるし、ついてない事ばっかり…!』

「うん…」

『なのに白石君と居ると肩の荷が降りたみたいに楽だし、優しいし、格好良いって思わされるし、アタシはお金があればそれだけで良かったのに、どうしてくれんの…!』

「…俺が働いてる間、名前ちゃんが家で待っててくれるっちゅうなら頑張るで?思い描いてた様な裕福な暮らしは出来ひんと思うけど、それなりに暮らせるように努力するから。それじゃあかんかな?」

『っ、駄目に決まってんじゃん!それなりなんか足りない!全然足りない!!』

「ほな、それなりで足りひん部分は俺が埋める」

『え、』

「名前ちゃんが今まで知らへんかった好きの重さ押し付けたる」

『―――……』

「覚悟しといてな?」


腕の力を緩めて彼女の頬っぺたを支えると、そんなの要らないなんて悪態付かれてしもたけど、そう言った彼女は今まで見た事も無いクシャクシャな柔らかい顔をしてた。
これから先、こんな風に知らない彼女を見てもっと愛しくなるんやろうと思うと幸せが込み上げた。

君が好きです。



(っていうか白石君が企業興すとか本当に検事にでもなれば良い話しじゃん)
(え?)
(それか謙也の病院貰ったら?謙也じゃ荷が重いだろうし白石君が経営すれば病棟も利益も今よりでっかくなると思う)
(それは買い被り過ぎなんちゃうかなぁ…?)
(うんそうしよう、アタシやっぱりお金は外せない!)
(ふ、振り出しに戻ってるやんか…)
(アタシの事誰かに持ってかれたくなかったら頑張ってね)
(あんな、俺はもう離す気無いし名前ちゃんやって離れられへんなるんやから)
(出たモーソーヘキ)
(………………)




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完結です。
何だか今回は(も)蔵のキャラ崩れが目立ち過ぎたり、急に浮いたり沈んだりで理解困難なお話になってしまった気がします。詰め込みたいところは詰め込んだつもりですが、逆にそれが余計だったような……(泣)
とにかくそんなお話に最後まで付き合って下さいました方が居れば幸せいっぱいです。有難うございました!
最近は更新ペースが落ち、完結という言葉と無縁に近かったので今回もそこだけは自己満足として他のお話のやる気に繋げたいと思います。
最後に、とんでもないヒロインで不快に思われた方がいらっしゃいましたら申し訳ありませんでした。

(20111113)


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