イチ → ソルベ

その日は本当にラッキーなのよ!
午前中とは運勢が変わったんだと思ったわ。昼下がりにソファで寝転んでいたら、突然にイルーゾォがゼリーを持ってやって来た。キラキラと光るゼリーはとってもキレイで見ているだけで楽しいわ!それにオレンジやブドウや、ベリーがたくさん乗っているんだから幸せよね。食べるのも勿体ないくらいだわ。
それでもイルーゾォがくれたから、美味しそうなブドウがたくさんのったのを選んでみた。可愛らしい見た目、甘く漂う匂い、一口めだけでも幸せ!

そのあとすぐにメローネがやって来た。お礼に渡そうと用意しておいたお菓子を渡しただけで抱きしめられてしまった!メローネの気持ちなんてわからないんだから、ドキドキするだけ無駄なのに、時々本気っぽいこと言うから困るのよ!
でもそれだけ喜んでくれたからヨシとしよう。今度からもっとメローネのことを考えてプレゼントしようって思ったわ。

そんなことしてたらソルベが一人でやって来た。リゾットを探していたけれど、アパルトには居ないと告げれば、待たせてもらう、とソファに腰を掛けた。

「今日はジェラートは?」
「食い物買ってくると言ってマーケットに。あとで来るさ」
あ、私も行かなくちゃ!思い出して「そうなのね」、呟けばソルベが笑った。
「どうしたの?」
「何も?、イチこそどうした」
「いきなり笑うから、不思議だなって思ったのよ」

素直に言っただけなのに。
ソルベはそれからしばらく間をあけて。

「おまえは不思議なヤツだな」

そう言った。
話が繋がってないわよ。
けれど、なんだかそれが楽しくってついつい顔を覗き混んで「何が不思議なの?」、聞いてしまった。
「ここがそんなに気に入ったか?」
「私、ここ大好きよ!」
「それが不思議なんだよ」
「なぜ?」
「暗殺者だぜ?」
笑いながら言う。その感じがそれっぽくないけどね!
でも、そうなのよね。
うぅんと唸って「そうね‥」、言えば手を伸ばして髪の毛をぐしゃぐしゃに混ぜられた。
「あっ、でも!」
そうだ、思い出した!
「プロシュートは、私を殺す時はせめて苦しまないように殺してくれるって言ってたわ!」
それは少しありがたいわね、そう言ったら声をあげて笑われた!見たことないわ、こんなに笑うソルベ!
やっぱり今日はラッキーね!

「ここの連中なら皆そういうさ」
「やり方を知っているから?」
「その通り」

ニヤリと口の端をあげる。
そんな日がくるのかな、少し息がつまってしまった。それを見越してなのか、ソルベはもう一度、今度は私の頭をポンと叩いて「まぁ、期待しておけ」、そう言った。
どう期待しろっていうの、そう思ったけれど。
私は立ち上がって、キッチンに置いておいたお気に入りの1枚ずつ入ったビスコットを2つ手に取った。少し大きめで添加物も使っていないのよ。
ソルベにどうそと差し出して「期待しておくわ」、自分も口に入れた。ガリガリ噛むのが楽しいの。

そうしたら玄関が開いたのがわかった。
「おかえり、リゾット」
「あぁ、ソルベも来ていたのか」
「さっき来たところだ」
キッチンの横を抜けて、私とソルベが居たソファの横を通った。そのままソルベも立ち上がって、奥の部屋へと連れだっていく。
その様子を見ていたらソルベがさっきのビスコットを見せながら「わりぃな、後でいただく」、そう胸ポケットにいれた。
「無添加だからね」
背中に声をかけても振り返るわけでもないけれど。

さて!
私も買い物に行かなくちゃ!明日は仕事だから、今日の内に買い物をしておきたいの。
外を見れば夕方。陽が傾きはじめた。
お財布を用意して、さて出よう、思った時に「イチ」、奥の部屋から呼び止められた。

「なに?」
「今日、ペッシが魚を持ってくることになった」
「わ!やった!」
続けて「オレがやるから他のものを」。
「うん、わかった!買い物行ってくるね」
「手伝おうか」
「大丈夫よ!行ってくる!」

片手をあげて玄関をでる。
いつものマーケットに足が急ぐ。ペッシが釣って来たのかな、なんの魚なんだろう!楽しみだ!
石畳をスニーカーで歩きながら目当てのマーケットまでを歩く。道すがら、黒い猫が路地へと入って行った。美人さん、元気かな。余所見をしたり、空を見上げたりしながらついたマーケット、いつものレジ打ちの女性はいるかしら!
買うものはたくさんのある。必要なもの、皆が好きなもの、私が好きなもの。
そうして馴染んだマーケットに足を踏み入れた。

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