メローネ → プロシュート

イチから貰った紙袋をぶら下げて夕方の街を歩く。段々と暮れる石畳に街灯が目立ちはじめた。
なんて楽しい日だ。つい口元が弛んでしまう。

立ち止まって貰った紙袋の中を覗けば、黄色の缶に入ったレモン味のキャンディが入っていた。ノーシュガー、さすがイチ!そのまま開けて一粒口に入れた。その時、「何突っ立ってるんだ」後ろから聞こえた。その声に振り返ると「プロシュート」、今日も隙のない男がそこに居た。

「飴、なめるかい?」
「なんだ急に」
「イチから貰ったんだ」

そういって黄色の缶を差し出せば一瞬躊躇したように手を止めたけど、すぐに一粒つまんで口に入れた。はじめから素直に受けとれば良いのに、なんて心の中だけで毒づいた。

「甘いな」
「ノーシュガーだ、辛党」
「普段飴なんて舐めねぇからな」

ガリガリと飴を噛む音が聞こえてきた。あげて損したな。

「そういやイチはアパートに?」
「イルとティータイムしてた」
ハハッと笑って「珍しいな」、なんてプロシュートは言う。そう、だから驚いたんだ。まるで、誰かと寛ぐような姿を見せていた。そこまで手懐けたのは誰かな、なんて思ってしまう。
「旨そうなゼリー食ってた」
「餌付けされたな」
「オレもやろうかな」
冗談のつもりでもなかったけれど、「手ェだすつもりか、変態」、愉快な声色が聞こえた。
ニヤリと笑って「さっきも抱き締めてきたぜ」と伝えれば、プロシュートはそのままハンッと一笑に伏す。諌められたようだ。まぁ構わねぇけど。

「コレも用意した服のお礼だってくれたんだ」

そもそもが砂と血まみれになった服を処分したことが発端なんだ。だから気にしなくて良いのに。あっそれを伝えるのを忘れていた。
袋を揺らしてプロシュートに見せれば、まだ中には何かあるようでガサガサと音を立てる。覗けば包みに入ったものと、小さなメッセージカードに"ありがとう"と書かれていた。ワオ、手書き!

「かわいいじゃあないか」

取り出して見た。
つい癖なんだろうか、乾いた唇を舐めてしまった。それを見たからだろうか、プロシュートは

「後ろにおっかねぇのが居るから、ホドホドにしておけよ」

カミソリが出てくるぜ?と片手を上げながら去っていった。




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