きみとふたりきり



そんな風に色々あった修学旅行が終わり、こっちでも向こうの地のように寒さが厳しく感じるようになってきた。
そんなある日、お昼を食べた後にリタがお手洗いへと席を外した時だった。


「二十四日?今月のです?」
「…ああ」


今月の二十四日と言えば、クリスマスイブ。
去年はリタに誘われて、二十五日にユーリたちのいた施設のパーティーに参加させてもらった覚えがある。

あの施設にいた子供たちは元気だろうか。
あの年代の子供というのは一年経つだけでもびっくりするくらいに成長してしまう。
身体や心がどんどん成長していっても、あの温かい笑顔はそのままでいてほしい。


「今年も施設のパーティーがあるんです?確か去年はクリスマスでしたよね。今年はイブにやるんです?」
「いや、二十五日だけど」
「え?」


じゃあどうして二十四日なんです?
そう聞こうとしたら、彼はそっぽ向いていて。


「あ、の…ユーリ?」
「…パーティーは二十五日だから、二十四日空いてるか聞いてんの」
「……?


二十五日にパーティーなら二十五日の予定を聞くべきだろう。
なのにさっきから彼が聞いてくるのは二十四日の予定。

彼の真意がどうも理解しがたく、首を傾げていたわたしに彼は盛大なため息を漏らしながらこっちを見た。
紫紺の瞳にばっちり見つめられ、なんだか恥ずかしくなって。


「…だからっ」
「だから?」
「……二人で過ごしたいって、言ってんの」
「え…」


ほら、よく考えてみれば特別に二人で何かしたなんてほとんどないだろ、だからさ、と彼は言う。

そう言われてみれば、付き合って以来二人きりというのは帰り道、たまに駅まで一緒に帰ったりとか学校に関係しているところではあったけれども、休みの日に二人でどこかに出かけたりとかそういうこと…恋人らしいような思い出は特にない。

『付き合っている』という関係があるだけで、以前と大差なかった。

それでも満足しているからいいのかもしれないけれど、やっぱりそういう思い出も欲しいなとは、思う。
数か月経つのに気付かなかっただなんて、情けない。


「で、予定入ってる?それとも……いや?」
「そ、そんなわけありません!…わたしだって」


一緒に過ごしたい、です。

彼への返事がだんだんと弱々しくなってしまったのは、ここが教室だということを思い出して、一気に恥ずかしくなったから。

実際、近くでご飯を食べていた友達の温かい笑みというか視線を感じてしまい、顔から火が出そうだ。


「じゃ、決まりだな」


彼はそう言ってわたしの頭をくしゃりと撫でると教室を出て行った。
その後ろ姿をぼおっと眺めて暫くして、はっと気づく。


――…これって…デート、です?


特別な日に、二人で出かける。
なんか恋人同士みたい、なんて実際そうなのに考えてしまう自分がいた。



(…何着ようかな)





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