数分前までバイブを咥えていた秘部はほぐれて、だらしなく涎を滲ませていた。私がスカートを捲ったのを見て、彼も衣服を身につけたまま局部を露出させた。窮屈そうなネクタイを外そうとした時、硬く立ち上がったものが擦り付けられて、それが挿入された時のことしか考えられなくなった。

「もう慣らす必要もないな」
「は、早く……んぅっ」

避妊具を着ける時間ももどかしかった。欲しくてたまらないのを見透かしたように唇が触れて、舌が口内を掻き回した。焦らしているというより、我慢ができない私をなだめているように思えた。いやらしいキスの最中、熱い塊が体内を押し拡げた。

「ん!んんーーっ」

発した悲鳴がくぐもった音になった。刺激を待ちわびた体が歓喜していた。全てが挿入されて互いの恥骨同士が当たると唇が離れた。

「はっ……!あぁ……」
「どうだ?」
「っ……わかってるくせに」
「わからないな」

意地悪な台詞を口にして、彼は浅いところをゆっくり往復した。繋がっている満足感は十分にあった。だけど、頂点に登りつめるには刺激が足りなかった。

「義孝、気持ちいい……!もっと、」

その先をねだる前に体を揺さぶられて、はしたない声が漏れた。温かい手がニットを捲り上げて膨らみに触れた。先端を舌で優しく弄ばれて、彼が収まっている場所がぐにゃりとうねった。

「手首……痛むか?」
「あぅ、んっ……!平気、だから」

シーツを掴んだ両方の手首に指が添えられた。手錠をつけている時はそんな心配をしてくれなかったのに、こんな時に優しくするなんてずるい。無愛想な彼の気遣いが嬉しくて、荒々しく動き続ける体を見上げた。

「何を見てる?」
「ん……睫毛が長いなって」
「唯子も長い」

また唇が重なって、睫毛の先がさわさわと触れ合った。服越しに体温が伝わって、普段するように裸でくっついている気分になった。

「私っ……もう」
「ああ……ッ、こっちももうすぐだ」

奥深くを何度も突かれて、全身が快感の波に飲み込まれた。自重で少しばかりシーツに沈んだ腕を握って、体を仰け反らせた。

「ああぁっ……!イく!イ、く……!」

限界を迎えている間も、激しいピストン運動は止まらなかった。目の前が眩むほどの快楽に浸って、やっと呼吸が落ち着いてきた頃、お腹の上に頭が乗せられた。後ろに撫でつけた髪が額にかかって、肌は汗ばんでいた。乱れた髪を両手で撫でると嫌そうな顔をした。そんな露骨な表情の変化も愛おしく感じた。





あの後、バルコニーの窓の鍵をかけていなかったことで彼にこっぴどく叱られてしまった。いつから施錠していないのかと能面のような表情で尋ねられて、覚えていないとは口が裂けても言えなかった。

オートロックだから安心とは限らないと彼は言った。真っ当な意見だった。住人に成りすまされたり、外壁をよじ登られてしまえば意味がない。近所のスーパーで起こった強盗事件は他人事ではないと思った。今までが甘かったこともあって、今後は出入り口の施錠を徹底しなければと気を引き締めた。

「忍び込んだ家に手錠をかけられた女性がいたら、強盗のほうがびっくりしそう」
「女性?痴女の間違いだろ」
「それなら義孝は痴漢ね」
「喜ばせたのに酷い言われようだ」
「怒った?」
「別に」

くだらない会話をしていることがおかしくて、顔を見合わせて笑った。
騒動の元になった手錠は鍵と一緒に布製の袋に入れた。紛失防止のために鍵にキーホルダーをつけることも忘れなかった。手錠と鍵が入った袋を見て、彼がぽつりと呟いた。

「あまりやり過ぎるなよ」

その一言で意味を察して素直に頷いた。今回の件で懲りたので、もう自分の体を拘束しようとは思わなかった。いつか彼が使ってくれることを期待して、おもちゃを収納している箱にそれを仕舞った。


2018.11.27

 

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