普段は使っていないシングルベッド。ここで片付けを手伝ってもらった時、おもちゃに興味を持った彼に意地悪をされた。嫌だと言ってもやめてくれず、何度もイかされてしまった。だけどそれが気持ちよかったことは事実で、思い出すと体が熱くなった。

相当な数のおもちゃを整理できたけど、いくつかは手付かずのまま残っていた。箱の中にあった手錠とバイブを見て、あの時のような興奮が得られるかもしれないと考えた。
いざ実践すると、一人で体を拘束しても何の面白みもないことがわかった。当然、快感が増幅することもなかった。おまけにバイブの電池が切れて動かなくなり、ただ入っているだけになった。ジョークグッズに過度な期待を抱いた自分が心底哀れに思えた。

体を起こすと、枕元に置いたはずの鍵が見当たらなかった。ベッドと壁の隙間から滑り落ちてカーペットに落下したらしい。両腕が使えない状態ではベッドを動かせず、這いつくばって下の空間を探すこともできなかった。

この時の私はさほど焦っていなかった。手錠は本物ではなく、健全な方のおもちゃ屋で買える子供用の玩具だ。大部分がプラスチックでできているから簡単に壊せると思った。ところが左右の輪を繋ぐ鎖は頑丈で、力を加えても数ミリの隙間すらできなかった。それから30分ほど、思いつく限りの手段を試しても破壊できず、手首が痛くなっただけだった。

興味本位で始めたことが、ここまで大ごとになるとは思わなかった。喉がカラカラに渇いているし、トイレにも行きたい。そんな時、玄関の扉が開く音が聞こえた。助かったと思う一方で、彼の呆れた顔が頭に浮かんだ。背中側に回した両手に手錠がかかって、秘部にバイブを挿れた姿を見られるなんて、あまりにも格好が悪い。
上半身を起こして捲れたスカートを直して、バイブを隠した。その直後に部屋のドアを開けた彼の右手には、リビングに置きっぱなしにしていた私の携帯が握られていた。

「あ……おかえり」

焦りでますます喉が渇いて、掠れた声が出た。

「何があった?」

手錠をかけた状態の腕を見たためか、見たことのない怖い顔をしていた。肩を掴んだ手に力が入って、少しだけ痛かった。

「義孝、怒らないで……自分でやったの」

強張った表情が少しずつ元に戻っていった。





水を飲ませてもらって一息ついた。彼が血相を変えたのは理由があった。ベッドの下に落ちた鍵を探しながら、ニュースで見た内容を話してくれた。

数時間ほど前、近所のスーパーで強盗事件があった。刃物を持った男が店員を脅し、売上金を盗んで逃走した。現場は人通りの多い商店街であるにも関わらず、逃走後の目撃情報が少なく、地元に詳しい者が民家や空き地に潜伏している可能性があると見られ、周辺は現在も多数の警官が張り込んでいるそうだ。

そういえば、少し前にパトカーのサイレンが聞こえた。すぐ近くで事件が起こっていたなんて考えもしなかった。

「心配して帰ってくれたの?」

聞こえているはずなのに、彼は答えなかった。

「鍵というのはこれか?」
「そう。隙間に落ちて取れなくなったの」

鍵が見つかったことに安心していると、彼がベッドに座り込んでおもむろにスカートを捲り上げた。バイブを咥え込んだ秘部が晒されてしまった。

「こんなことだろうと思った」
「やだぁ……」
「片付けができたら外してやる」
「片付け?」

言葉の意味がわからなくてぽかんとしていると、持っていた鍵をスラックスのポケットに入れてしまった。

「自分で突っ込んだんだ。出す時も同じようにできるだろ?」

彼は確実に怒っていた。どこか棘のある声がその証拠だった。どうにかしてバイブを出せないか。当然、そんなことは一人の時に何度も試した。先端が大きく曲がっている形状のせいで、中で引っかかって出てこないのだ。もう一度力を入れてみても、結果は同じだった。

「う……やっぱり無理」

ひやりとした触感の指先が敏感な突起に触れて、体全体がびくんと動いた。

「っ!?そこは、」
「大人しくしてろ」

反対の手に潤滑ゼリーの容器が握られているのが見えた。おもちゃを収納している箱から取り出したらしい。冷たいゼリーが体温で馴染むと、滑らかに動く指先が心地よく感じた。陰部を全て覆いそうな大きな手。太くてゴツゴツしているのに、優しく繊細に動いて弱いところを的確に攻めた。

「やっ……やめて」
「期待してたのか?こんなに硬くして」
「ひぃっ!あぁぁ……!」

ぬるぬるの指が突起を挟んだまま動いて、強い刺激に腰が跳ねた。執拗に弄られてイきそうになったところで指が離れた。

「あ……な、んで……?」
「真面目にやれ」

奥に入ったまま位置が変わらないバイブを見て、彼ははっきりとそう言った。掴んで抜いてくれれば終わるのに、そんな気はないらしい。ふざけているのはそっちの方だと言おうとして堪えた。機嫌を損ねてしまえば、このままの格好で放置されかねない。

「お願い、手伝って」

ハアと大きなため息をついて、彼はバイブの持ち手部分を握った。抜いてくれると思ったのに、ゆっくりと前後に出し入れを始めた。最初に挿入した時から時間が経って不快感を感じていたのに、触られてからは潤いが戻りつつあった。

「う……動かしちゃ……あ、っ」
「ふっ」

声を抑えられない私を見て、彼は明らかに楽しんでいた。しばらく動かした後、やや手前の位置でバイブを止めた。片付けをしろと言ったくせに、その行動は矛盾していた。後は自分で何とかしろということなのか。納得できずに目で訴えても、無表情が崩れることはなかった。

ベッドの端に腰掛けて、床につま先をつけた状態で脚を開いた。寝転がった状態よりも力を入れやすくなった気がした。

「んんっ……」

少しずつ押し出されたそれは、濡れて光っていた。彼に余計な心配をかけたことは事実だけど、バイブを出すところを観察するなんてやり過ぎだ。恥ずかしくて情けなくて、一刻も早く終わらせて脚を閉じたかった。

「そんなに近くで見ないで」
「別に構わないだろう」
「うぅ……」

もう一度腹部に力を込めると、残りの部分が徐々に露わになった。あと数センチというところで、バイブそのものの重みもあって完全に抜け出た。

ゴトンッ。
床に落下したバイブが派手な音を立てた。先ほどまで興味津々な様子だったのに、彼は転がったそれを一瞥しただけですぐに視線を戻した。

「はあ……っ」
「そんなに良かったのか?」

意地悪な問いかけに首を振ると、両腕が背中に回されて抱きしめられる格好になった。鍵が外されて、両手が自由に使えるようになった。バイブを拾うために身を屈めた彼の顔は見えなかった。だけど、フンと鼻で笑われたのがわかった。

「こいつがあれば俺は必要ないな」
「や、やだ!義孝のがいい!」
「俺の何がいいって?」
「あ……その……」

答えられずにいると、肩を軽く押されてベッドに倒された。体の上に彼が覆いかぶさって、二人分の重みでスプリングがギシリと音を立てた。

「チ×ポさえあればいいんだろ?」
「違うっ、義孝が好きだから……!」

拾ったバイブをベッドの端に放り投げて、彼は笑っていた。怒っていたのではなく、罰を与えようとしたわけでもない。私にこういう台詞を言わせたかったのだと気がついた。


2018.11.18

 

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