7.愛をねだる両手
濡れた体を大雑把に拭いて、倒れるようにベッドに横たわった。二人して余裕がないことがおかしくて、顔を見合わせて笑った。
髪を梳く指が心地よくて目を閉じると、もう一方の手が胸の膨らみを優しく揉んだ。ちゅっと音を立てて唇が吸い付いて、立ち上がった先端を口内で転がした。
「ん、んっ…あ」
しばらくそうしていた唇が離れて、今度は唇へ重なった。奥まで入った峯さんの舌に夢中で舌を絡ませると、徐々に息が苦しくなって、頭がぼうっとしてきた。
「わ…!」
突然、右の足首を掴んで持ち上げられて、大きな声が出た。丸見えになった秘部を隠そうとしたけど、伸ばした手はあっさり退けられてしまった。
足首から始まって、次にふくらはぎ、膝、太ももへ唇が触れる。時々舌先で舐められるとくすぐったくて、吐息混じりの声が漏れた。右脚が終わると、左脚にも同様に愛撫を始めた。
「あし、ばっかり…恥ずかしい」
「……」
「峯さん…?」
峯さんの呼吸は乱れて、私を見る目はぎらぎらしていた。あの時とは様子が違くて別人みたいだけど、そんな姿を愛おしく感じた。
「私も、峯さんに触りたい」
思いきってそう告げると、頭を撫でてくれた。
硬く立ち上がったものにキスをして、舐めて、軽く握って動かした。様子を見ようと顔を上げると、私を見ていた峯さんと目が合って、恥ずかしかった。
無表情な彼が反応するところを見たくて、全て咥えると腰が微かに動いた。
「あ…唯子」
口内からゆっくり出して、また咥える動作を繰り返す。先端の、段になっているところを擦ると、苦しそうに呻く声が聞こえた。嬉しくなってそのまま続けていると、頬に手が添えられた。
「…もう、いい」
「気持ちよくなかった?」
「そうじゃない」
先端に透明の液体が滲んでいるのをわかっていながら、意地悪を言った。次の瞬間、体を起こした峯さんに押し倒されて、長い指が濡れた秘部をなぞった。
「はっ、あ…!」
中に入っただけで、気持ちいい。そのまま内部を探るように動いて、熱くなった体がびくびくと跳ねた。
「唯子…」
熱のこもった声で名前を呼ばれる。何も言っていないけど、峯さんの言いたいことがわかって、顔を見ながら頷いた。
「んあぁ…っ」
少しずつ押し入ってくる感覚に腰が震える。圧迫感があったけど、十分に濡れていたおかげで全て収まった。広い背中に両腕を回すと、奥を突くような動きに変わった。
「峯さんっ、ゆっくりして…!」
突然の刺激に驚いてそう訴えると、すぐに緩やかな動きに変えてくれた。でも、そうすることで峯さんの形をはっきり感じて、余計辛くなってしまった。
「あ、あっ!」
温かい手が下腹部に触れる。中で動くそれを意識させられて、体が過敏に反応してしまう。峯さんは額に汗をかいているけど、表情にはまだまだ余裕が感じられた。
「ぅ…んんっ」
怖いくらいの快感が、下半身からせり上がってくる。どうして私だけこんなに感じているんだろうと考えながら、唇を噛んだ。
「唯子…いきそうなら我慢するな」
「い、やっ……」
「力を抜いて楽にしろ」
そんな風に耳元で囁かれたら、もう我慢なんてできなくて。汗ばんだ体にしがみついて、はしたない声を上げながら達してしまった。
「はぁっ…!はっ…」
奥まで入ったものをぎゅうぎゅう締め付けて、峯さんが小さく呻き声を漏らす。悩ましげに眉を寄せる姿に見とれた。
「峯、さん」
「なんだっ…」
「どうして…こんな時も、かっこいいの」
「あんまり、煽るんじゃない」
私、煽ってなんかいない。
そう言おうとしたところで、ぷっくり膨れた突起を峯さんの指が優しく擦った。
「ひっ…!あ、あっ!」
「前に弄った時は、すぐいってたな」
「やぁ!これっだめぇ…!」
「くっ…、どんどんきつくなる」
秘部から溢れた液体を塗りつけられて、指の動きが滑らかになった。それと同時に止まっていた腰が動き始めて、二つの強すぎる刺激に声を抑えられない。
「あ!いっ…く、っ……!」
再び限界を迎え、息を乱した私を見て、峯さんは戸惑ったような顔をしつつ、どこか嬉しそうだった。
「すごいな、何回でもいけそうだ」
「うぅ…やだぁっ」
まだ体が痙攣していて、敏感になった内部を擦られるのが辛い。だけど峯さんの動きは止まる気配がなくて、私は息も絶え絶えになっていた。
「唯子、好きだっ…」
お風呂の中では、催促してやっと言ってくれたのに。こんな時に言うなんてずるい。
「みねさんっ!私も…!」
伸びてきた峯さんの手を握りしめて、夢中で叫んだ。腰を打ち付ける速度が増した。
「っは…!もう、いく、」
激しく動かされていた性器が抜かれて、白く濁った液体がお腹に飛び散った。指で触ると、粘り気があって生温かかった。
「嬉しい」
「ん…?」
「峯さんも、気持ちよかったんだ」
「唯子…」
峯さんは体に精液が付くことも気にせず、私に覆いかぶさって何度もキスをした。
*
「あっ…髭が生えてる」
「丸一日経ったからな」
隣で寝ている峯さんの顔をまじまじと眺めた。髭を見るのは初めてで、新鮮な気持ちになった。
行為の最中は気にならなかったけど、シングルベッドに二人で寝ているので、結構ぎりぎりだ。くっついていたい私にとっては、この窮屈さは嬉しかった。
「なあ」
「んー?」
「大吾さんとどっちがよかった?」
「え!?」
大吾さんの名前が出てくると思わなかったので、驚いた。質問の意図がわからなかった。
「そんな…わからないよ…」
「そうか」
「峯さんは、また三人でしたい?」
「乱れた唯子を見られるなら、それもいい」
開いた口が塞がらない私を見て、峯さんが呆れたような顔をして笑った。
「素直だな。なんでも真に受けて」
それを聞いて、先ほどの発言が冗談だとわかって、ほっとした。三人でのプレイでなければ興奮を得られないとか、そんな性癖を持っていたら色々と問題があるし、何よりも私の身がもたない。この短時間でそんなことまで考えてしまった。
峯さんの両腕が急に私を抱きしめて、身動きがとれなくなった。
「峯さん?」
「誰にも唯子を渡したくない」
「大吾さんに、嫉妬してるの…?」
嫉妬という言葉を聞いて、眉間のしわが深くなった。
「…そうかもな」
「心配しないで。峯さんのこと、ちゃんと好きだから」
「ああ」
こんな甘いやりとりをしながら、馬鹿みたいにくっつけて、幸せだ。峯さんが目を閉じたのを見て、私も同じように目を閉じた。
そのまま温かい腕の中で眠りに落ちていった。
2018.6.22
タイトル:腹を空かせた夢喰い
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