「レンくん!レンくん!」 「何か用?」 「う、…」 ほらまたやっちまった。 目を合わせないでぶっきらぼうに言い放った言葉に怯み、屈託のない笑みをこちらに向けていた彼女は目に見えてしゅんとして「な、なんでもない」とくるりと身を翻した。 うっわ、隣から突き刺さる視線が痛い。 「あーあミク姉可哀想」 「……しょうがないだろ!」 悲しませたい訳じゃない。 ただ、なんとなく気恥ずかしくてまともに顔が見れないだけだ。 それに言葉を交わすだけで体温急上昇、なんて自分でもわけが分からないんだから仕方ないだろ。 ここ最近はずっとこんな調子で露骨に彼女を避けているものだから、目が合っただけで今にも泣き出しそうな顔をされるようにまでなってしまった。 「嫌われてる、よな…」 「バッカじゃないの」 リンさんキツいです。いや、俺だってわかってる。わかってるんだけどね。 「レンがいつまでもそんなんだったらリンがミク姉取っちゃうんだからね」 「え、は…?」 ミク姉慰めに行ってこよーっと、と上機嫌で駆けて言ったリンを呆気にとられたまま見送る。リンの言う通り俺が勝手に避けているんだから自業自得。馬鹿なのはわかってますとも。 一人分余裕が出来たソファーに仰向けに寝転がる。苛立ちで溜め息を吐けば嫌でも浮かんでくるのはミク姉の顔で、俺を見てする悲し気な表情と他の奴に向ける笑顔に、再び溜め息。こんな状況を作ってしまったのは紛れもなく俺だ。自分に嫌気が差す。 いやでも、ほら、だって、ミク姉最近ますます可愛くなってきたじゃん そこら辺の男なら一発で落ちそうな笑顔を振り撒いて近付いてくるんだぜ?それに加えて「レンくん!レンくん!」なんて小さい花をふわふわ飛ばしながら人懐っこく寄って来るもんだからさ。 な?想像してみろよ。直視なんて出来るわけないだろ。 いつの間にか眠っていたらしい。気付けばミク姉の顔が間近に見える。ああ、これは夢か。 「ミク…」 本当は"ミク姉"じゃなくて"ミク"って呼びたいんだ。夢の中なら何しても自由だろ。 名前を呼んだら夢の中のミク姉は恥ずかしそうに微笑んだ。やばい、可愛い。そのミク姉が更に俺との距離を詰める。 次に唇に柔らかな感触が上から降ってきたから、俺、放心状態。こんな都合の良い夢ありかよ。 夢なら折角だから、とミク姉の後頭部を引き寄せて深く口付けようとしたら、スルリと抜けられて手は空を切った。 「うわ、…なんて夢だよ」 身体を起こすと視界の端にほんの一瞬だが緑がちらついた気がした。まだ上手く機能しない頭で今のことを思い返していると階段を駆け降りてくる騒がしい音が聞こえてくる。 「ちょっとレン!あんたミク姉に何したのよ!!」 物凄い形相で迫ってきたリンに圧倒される。怖いっての。 こんなんだからミクオに見向きされないんじゃねーの?おっと今のは言ったらボコボコにされそうだから胸の内に仕舞っておこう。 ガシッと肩を掴まれ勢い良く前後に揺さぶられる。 頭ぐわんぐわんするぞ。 「は、…?ちょっ、おま、やめっ…!!」 「だって!今すれ違ったときにミク姉ったら、すっごい真っ赤な顔で階段かけ上がって行ったんだからね!」 「え……」 さっきの夢じゃない? 「ちょっと、なんでレンまで赤くなってんのよ!意味分かんない!」 くちびる盗まれた! わーい初レンミク ありがちなネタだけど仕方ない! てかレンミク可愛い。 自分の読んでもあまり萌えないけども← 個人的にリン→クオミク←レンが萌える 配布元:にやり |