『こんばんはー』
「いらっしゃい」
一楽ラーメンの暖簾をくぐり店の中へ。瞬間、おいしそうなにおいが私の胃を刺激する。やっぱり、ラーメンって言ったら一楽しかないよなー、なんて思いながら、威勢のいい店主さんに声をかける。
『おじちゃん、ラーメン1つお願いします』
「はいよ。…誰かと思ったらハルちゃんかい?」
『はい。お久しぶりです』
ほんと久しぶりだね、と続ける彼だったが、その両手は迅速かつ丁寧に一人前のラーメンを作っていた。
『ちょっと任務に出てて』
なりそうになるお腹を必死になだめながら、隣の親子に目を向ける。さっきからチラチラとこちらを見ているような感じがしたからなのだが、隣に座る黄色い髪の少年の隣にいたのは私の知る人物だった。
「ハルさん、ですよね?」
『イルカ?久しぶりだね、しかもこんなところで会うなんて。…ってことは、この少年は子供ってわけじゃなさそうだね』
「な、冗談はよしてくださいよ。俺、あなたと2つしか違わないんですから」
こいつは俺の教え子です、と言う彼の隣で、少年はニッと笑った。笑顔がかわいい子だな、って思ったのは最初の感想で、誰かに似てる、と言うのがその次の感想。しかし誰に似ているのかがはっきりしない。ぼんやりとした顔が思い浮かぶのだが、果たして誰だったか…。
「へい、お待ち。チャーシューサービスしといたよ」
『わー、ありがとう、おじちゃん』
「おう」
いただきます、と挨拶も忘れない。レンゲを右手にまずはスープ。それから箸を割って麺。ズズズ、と口いっぱいにそれを頬張って、おじちゃんがサービスしてくれたチャーシューも口に入れて。あー幸せ、ってスープをもう一杯飲もうとしたところで、再び隣からの視線を感じて顔をあげた。
「俺ってば、うずまきナルト」
『…うずまき、ナルト』
少年が名乗った瞬間に思い出されたのはもう何年も前に亡くなった彼らで、私は思わずイルカを見てしまった。この子の言っていることは本当なの?と。
黙って首を縦に振った彼のその行為は、本当だ、と言っているほかには解釈しようがない。
『よろしくね、ナルト』
それから2、3会話をした後、彼らは先に席を立った。残された私は一楽のおじちゃんとアレコレ話しながらのんびりと残りのラーメンをお腹に入れた。
『ごちそうさまでした。また来ます』
「おうよ!今度はおかわりぐらいしてけよ」
おじちゃんの声を後ろに聞きながら、人のにぎわう繁華街へと足を進めた。
一楽にて
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