信頼の隣に | ナノ
また昔の夢を見ていたらしい。最近よく昔のことを思い出すのは、私の死期が近いからなのだろうか?でもそんなこと、彼には言えないや。


『…ゲンマさん?』
「ああ。…苦しくないか?」
『大丈夫です』


彼の後ろの窓からオレンジ色の空が見える。もう中忍試験終わったのかな。
ここはきっと木の葉病院だろう、ベッドにせかされた私の腕から細い管が伸びている。もちろん点滴だ。


「あんまり無理するなよ」
『ゲンマさん、』
「ん?」
『…ゲンマさんのせいじゃないですよ』


何がだよ、なんて言いながら、彼は笑って私の頭を撫でた。こういう時はきっと、私の言っていることに心当たりがあるんだろうな、って。そう思うとなおさら、彼には告げられなかった。もうすぐ死んでしまうんです、と。
しかし彼はそんな私の隠し事もすべて知っているように私を見つめる。私はこれ以上彼を傷つけたくなくて、必死に違う話題を探した。


『…今年の下忍君たちは強そうですね、』
「…そうだな。うちはに日向に、いのしかちょう。蟲使いに犬使い、」


随分と木の葉の古株がそろったな、と彼はおなじみのアレをくわえた――千本だ。


『本選、誰が残ったんですか?』
「確か、木の葉が5、砂が3に、音が1だったはずだが」


誰かから試験のことを聞いたのだろう、彼は試験を見に行ってはいないはずだ。多分ここにいてくれた。…ゲンマさんはそういう人だ。


コンコンと扉が叩かれた。突然の来客に驚いていると、ゲンマさんは扉をあけに席を立った。スーと静かに扉が開かれ、よ、とやる気のなさそうな目が見える、カカシさんだ。


『どうしたんですか?』
「それはこっちの台詞でしょ」


ゲンマさんの後ろからため息交じりにそう言った後、ゲンマさんに2、3何かを話していた。あんまり聞こえなかったけど、サスケがどうのこうの、…サスケ?その人物について考えを巡らせると、案外容易に想像できた。あの子だ、今年の下忍のルーキー君。


「ハルもこんな調子だし、ハヤテに頼んであるから」
「すまねーな」
「いや。…それより、ナルトの先生を探してるんだが、誰かいい奴知らないか?」


あれ、よく見ると、カカシさんの右手には18禁のいけない書物がある。そんなものを病院に持ち込んだらダメじゃないですか、あなたの教え子君たちが真似しますよー。口には出さないけれど。


「先生ね、」
『あ、あの人はどうですか?』
「?」
『ほら、エビスさん』


「家庭教師」なんてもっとも先生らしいじゃないか。それにゲンマさんもそうだな、と同意してくれる。カカシさんはどう思っているのか不明だが(やる気のなさそうな目からは感情が読み取りにくい)、エビスさんを呼びに行くようだ。


「お邪魔しました。…あ、そうだ」


帰り際、カカシさんは何かを思い出したように再び私の隣までやってきた。


「…」
『ほんとですか?』


ニコリと笑った彼の顔は肯定を意味している。まあ彼がここで嘘をついても何の得もないんだけどね。


「何話してんだ、お前ら」
「ゲンマには秘密」
『秘密ですよ、ゲンマさん』


フン、と笑っただけでそれ以上追及しない彼。もう少し興味を持ってもいいのではないか?なんて思う私は矛盾しているのだろうか?でもこれも、彼をびっくりさせるためなのだ。




秘密のスパイ



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