十二番隊恋愛闘争 | ナノ
「この前は三席とお昼食べに行ったんだって?」


まったくこの人は情報が早いなー、と少しだけ溜息。


『技術開発局の人に頼まれたんです、阿近さんをお昼に連れ出して、って』
「あら、本当かしらねー」
『先輩、棒読みですよ』
「いいじゃない、三席のこと好きなんでしょ?」
『そんなこと一言も言ってません』
「あーごめんごめん、言い過ぎました」
『べー』
「今度また飲みに連れていくから、そういじけないの」


その日は朝から平和だった。
平和な朝に、何の疑いもなく飲みの約束をし、いつものように技術開発局に書類を持っていくために隊舎を出た。相変わらず、誰かとすれ違うたびに増える書類たち。


『ふふーん、でも今日はお土産もあるもんねー』


技術開発局の建物番さんが少し不審な顔をした。大きな独り言のせいだろう。
しかし、阿近さんのところにお土産を持っていくのは初の試みなのだ。喜んでもらえるだろうか、嫌いではないだろうか、話は弾むだろうか。
独り言が出てしまうのはなんというか、しょうがない。


そんな様子だったため、技術開発局の暗い廊下に入ってからも、背後の人影に注意をすることなんてできていなくて。


「るいちゃん、」


あともう少しで阿近さんの部屋、と駆け出しそうな足に歯止めをかけているときだった。その声を聞いただけで体が震えるのがわかった。弓月さんだ。


「ちょっといいかな、話があるんだけど、」
『……ここでいいですか?』
「すまない、ここじゃ話ができないんだ、少し出ようか、っ!」
『う、』


すみません、と断る前に腹部に痛みが走った。そのまま目の前が暗くなる。
パサ、と持っていた書類が落ちて散らばる音。ここで声をあげれば阿近さんに気が付いてもらえるのに。少し先に大好きな人がいるのに。


「残念だったね、君の大好きな人は守ってくれないよ。それはわかっていたことだろう?」


わかっていたこと?
そこで私の意識は完全に消えた。











「遅いな、何かあったのか」


いつもなら遅くとももう来ている。と、さっきから何度も時計ばかり見ている。そのたびにばかだな、と目の前の装置の解体に向き直るのだが、どうにも集中できない。


「ったく、これじゃあいつと―――」


部屋から出て廊下の角をまがったところで、大量の白いものが散らばっていた。


「……まさかな、」


まさか。そのまさかが当たった。床に大量に散らばるそれは、十二番隊から技局へ持ち込まれたものだった。


「くそ、」


どういうことだ、何が起こっているのか。
ただ、何の確証もないが、長瀬が連れ去られたのだと直感的に確信した。


「また守れないのかよ、俺は、くそっ」


廊下を逆戻りして、技局の中枢へと向かった。その装置を動かすほどの確かな証拠はなかったが、あとでどんな罰を受けてもいい、だれに何を言われようと―――。


待ってろ、長瀬、無事でいろ。



また君を守れないのは嫌なんだ



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