幸せになろうよ | ナノ
寝た、か。


昨夜と同じく、ベッドに入るとすぐに眠ってしまった。今日は泣きつかれたんだろうけどな。フォルスが来たのは、それからしばらく経った頃だった。


「アベルト、カヤは?」
「あー、眠っちまったよ、」
「そっか。……なんか変わった様子あった?」
「大ありだ。少し話しねーか」


部屋にカヤだけ置いておくわけにもいかないため(たぶん、何度か起きて情緒不安定になるだろう)、フォルスを中に招き入れた。


自分の家のようにお茶を出して、リビングに座ると、フォルスが今日の出来事を語ってくれた。ソウケンやシーダから聞いたこともすべて。


「嫌がらせとか全然知らなくてさ、けどアベルトは知ってたんでしょ?」
「ん、まあな。ここにもよく来てたし」
「カヤ、大丈夫?」
「……大丈夫じゃなさそうだからお前もここに来たんだろ?」


言うと、フォルスは真剣なまなざしのままカヤの眠る方を見た。今日のあいつの言葉はまだ話していない。


「響命石の力が弱まってる気がしたんだ」


まったく、こいつは。


「あたりだ。……さっきそのことでずっと泣いてた」
「うん、そうだよね」
「人を信じることができなくなった、」
「カヤが?」
「ああ」


どうしたもんかな、とは自然に漏れていた。
こればかりはフォルスもどうしようもないのか、押し黙ったまま。


「けどまだ、アベルトを信じることはできるんだよね、」
「そうだと信じたいってとこだがな」
「それでカヤは、召喚師をやめたいわけでも、キタロウのことが嫌いになったわけでもないよね」
「そう言ってたな」
「……じゃあ、大丈夫」
「な、おまえ、」
「響友との絆はそう簡単に切れるものじゃなよ、当人同士が切りたいと思っているならまだしも、そうなりたいと思っているわけじゃないみたいだし」


親友の言葉は心強かった。
この前まではフォルスをはじめとする召喚師組と任務をしていたが、召喚師のこと、まして響友とのことなんて、一介の警察騎士にわかるはずもない。だが、フォルスがいうならそうなのだろう。こいつの召喚師としての器はかなりのものだ。あくまで召喚師としての、だが。


「だから、僕らが心配すべきは、」
「異世界調停機構の方か」
「うん、そうなるね」


そこで、カヤがなにやらうめく声が聞こえた。


「カヤ、大丈夫か」
『ん、……アベルト、』
「そうだ。変な夢見たのか?」
『夢、か、』
「ああ、夢だよ。……眠れるか?」


少し起きる、とベッドから出たカヤは、キッチンまできてフォルスを見、


『アベルト、これまだ夢だよ〜』


と冷蔵庫からお茶を取り出した。


「ははは、カヤ、おはよう」
『おはよう、フォルス』
「まだ真夜中だぞ、お前ら」


なんだか学生の頃のようで、少し懐かしい思いが心の中を走って行った。








警察騎士の悩み



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