09黒芒楼の奴ら
「志々尾―!!」
烏森は校舎の中が神有地になっているんだったよな、と校門に手を触れた途端に始まった。
「聞こえてるかー!? 聞こえてんだろ! いーから聞け!」
これは弟君の良守。バカという印象がそうそうについたことはここだけの話。
「コノヤロー気に食わねえんだよ! てめーの態度はよ!! いいか! うるせーとか言うなよ! てめーがしゃねんねーから俺がしゃべってんだ!!」
いやいやうるさいよ。
校門からどうどうと行内へと侵入し、声のする方へと向かった。探す手間が省けるのはいいけど、何やってんだ。
「一人でグダグダしてんじゃねーぞバーカ! 何かあるなら言えよ! あ、やっぱいーや! 言うな! メンドイから!!」
どっちだよ。
心の中でツッコミを入れつつ、バカみたいな会話?の内容に、中学生ってことは誰と同じくらいだろう、と思考をめぐらせた。
ああ、限か。
「けど―――お前が何悩んでんのかなんて知らねーけど、だから、たぶんだけど―――気にすんな!」
そこまで聞いてようやく良守君を目視で確認できた。校舎の上で叫んでいるようだった。
私の侵入に気付いているのか、気付いていないのか、まだ何も言われていない。
なんて挨拶しようかしら、と腕をくんだところで、後ろに気配。
「だれ」
女の子の声。
正守の実家のお隣さんだろう。
『怪しいものじゃないわ。夜行から応援に来たの』
振り向きざまそう伝えたところで、その後もごにょごにょ話していた良守が降りてきた。
「夜行の……?」
『リンと申します。よろしくね』
え、助っ人ってこの人? といった反応だろうか。
しばらく無言の時間が続いたが、先に時音が頭を下げた。続いて良守も。
「よろしくお願いします」
『そんな頭まで下げなくても。仲良くしましょ、同志として』
二コリと笑ったところで、後ろに限が近寄ってきた。
『私は夜行の人間だけど、あまりそういった組織に縛られたくはないの。だからあなたたちとは個人的に仲良くなりたいのよ。……限とも仲良くしてくれてありがとう』
「挨拶はあとだ、敵が来た」
限の見る方角には、黒雲が立ち込めている。
『何あれ?』
「こっちが聞きたいよ」
すぐに黒雲は烏森上空へとたどり着き、弱そうな妖たちが文字通り降ってきた。
「結」
良守と時音の戦う声、限も狩って回っている。
私も、といきたいところだが、雑魚妖を適度に倒しながら上空の黒雲へと意識を集中させた。
敵の強さを確認しようと試みたのだが―――
「へえ、初めて見る顔だな」
後ろから声を掛けられた。
観たところ普通の人間と変わらないようだが、これは人皮をかぶった妖だろう。
限から入った報告を正守経由で知らされている。
『あら、興味を持ってくれてありがとう』
良守たちの方にも強そうなのが1ついるが、3人でどうにか相手をしてもらうほかなさそう。
腰に下げてある刀を鞘から抜くと、人皮をかぶった男もニヤリと笑って刀を出した。
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