魔核(コア)奪還編

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「私は騎士団のフレン・シーフォだ!ヨーデル殿下の記した書状をここに預かり参上した!帝国に伝えられた書状も逆臣の手による物である!即刻、軍を退け!!」

するとドンが彼に近付き何か話しかけているのが見えた。しかし遠くてハルカにはよく聞こえない。

フレンの登場で一変した状況にバルボスが怒りを隠しもせずラゴウを睨みつけた。

「ラゴウ、帝国側の根回しをしくじりやがったな!!」
「ひっ……」

すっかり縮こまったラゴウは怒鳴られても何も言い返さず、頭を抱え込んだまま動きもしない。その様子に舌を打ったバルボスの部下が、ラゴウの近くからライフルの標準を合わせている。狙いはフレンらしい。それに気付いたハルカは考えるより先に銃を撃っていた。ハルカの撃ったエアルの塊は相手のライフルを弾き落とす。ほんの少しだけ遅れて金槌が頭に当たり、バルボスの部下はその場に崩れ落ちた。

当たった、と拳を握るカロルを見て察するに、彼が金槌を投げてくれたようだ。

「ナイスだ!ハルカ、カロル!!」
「ガキ共、邪魔は許さんぞ!」

怒りで顔を染めているバルボスが巨大な銃でユーリ達を撃つ。各々悲鳴を上げながらなんとか部屋の出入り口まで逃げる中、ユーリだけが相手の懐に飛び込もうと向かっていく。

「ユーリ、危ない!」
「エアルを再充填するまで、少し時間があるはず。その隙を狙って……」

悲鳴にも似たエステルの声とは対照的に、リタは冷静に彼を援護する算段を呟く。それを聞いていたカロルが、バルボスが再び撃ったのを確認した瞬間飛び出した。しかしそんなカロルを狙って銃弾が放たれる。リタの予想以上にエアルの充填が早かったのだ。

それでも、カロルが被弾する事はなかった。突然現れた竜がいいタイミングでバルボスを吹き飛ばし、彼が転んだために逸れたのだ。初めてその姿を見たバルボスとレイヴンは竜とそれに跨る人物を訝しげに見ている。

「また出たわね、バカドラ!」
「リタ、間違えるな。敵はあっちだ……!」
「あたしの敵はバカドラよ!」
「今はほっとけ!」

形勢を不利だと判断したらしいバルボスがチェーンソーにも似た機械仕掛けの剣を振りかざすと竜巻が起こり、彼のでっぷりとした身体が簡単に宙に浮く。

「嘘、飛んだ!」
「おーお、大将だけトンズラか」
「あ、待て!バカドラ!あんたは逃がさないんだから!」

カロルとレイヴンの声を無視して、バルボスはそのまま飛び去ってしまった。思わず舌を打ったハルカの視界の横からリタが出て彼を追おうとする竜達に駆け寄る。それより先にユーリが前に出て呼びかけた。

「やつを追うなら一緒に頼む!羽の生えたのが居ないんでね」
「あんた、何言ってんの!?こいつは敵よ!」
「オレはなんとしても、やつを捕まえなきゃなんねぇ……頼む!」

少し距離のあるハルカでもわかるユーリの強い、強い瞳に何かを察したのか。竜はゆっくりと下りてくる。短く礼を言ったユーリが飛び乗ると、カロルは駆け寄りながら必死に呼びかけた。

「待って!ボク達も……!」
「こりゃどう見ても定員オーバーだ!」

確かに、竜の上には人がふたり。それ以上は誰がどう見ても無理だ。

「でも、ボク達も……!」
「お前らは留守番してろ!」
「そんな……!」

悔しそうに、心配そうにエステルが声を上げる。それを気にも留めずユーリは言った。

「ちゃんと歯磨いて、街の連中にも迷惑かけるなよ!」
「ユーリの馬鹿ぁっ!」
「フレンにもちょっと行ってくるって伝えといてくれ!」

カロルの言葉にも少し口角を上げるだけ。自分の言いたい事だけを一方的に告げて竜と共に飛び去るユーリの背に、ハルカは叫んだ。

「先に行って!あたしも必ず行くから!」

答えるようにユーリが片手を上げた、気がした。



to be continued...

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