〔小ネタとか〕 2016/04/19 15:14

純黒の悪夢を観てきたら安室さんが(以下略)


追記


「安室くーん!!!!!」

いくつものサイレンの音が重なり、壊滅状態に近い遊園地が赤いランプで照らされては陰る。
不服にも共に戦うことになったFBIの姿を木陰に一瞥して、歩き出した安室の耳に、聞き慣れた明るすぎる女の声が聞こえた。

「いた!!!安室くーーん!!!!!」

全速力で安室に向かって飛び込んでくる彼女を、成り行きで受け止める。

「花緒里さん!?どうしてここに!?」

安室は受け止めながら驚いて花緒里に問いかける。
しかし、そのすぐ後、自分の腕の中から聞こえた、ぐすん、という声にはっとする。

「私、安室くんのストーカーだよ!?なめないでよね…!!」

目を擦りながら、いつものように笑って明るく答えようとしているものの、その声は涙声だった。

「ポアロ行ったら安室くん今日休みだっていうから、安室くんの車探したら警察病院に置きっぱなしになってるし、車にだいじょばない傷ついてるし…!警察病院の中さがしても安室くんいないし、こわいオッサンはいっぱいいるし、そのあとオッサンに後つけられるし…!!」

彼女がなぜ警察病院にあった車を探せてしまったのかなんて見当はつく。
鍵マニアで盗聴器発信器マスターで長いこと安室を着け回したストーカーだ。それくらいやってのけてしまう。
それでいて安室の正体も組織のことも何も感づいていないのが奇跡的なくらいだ。
そして、彼女のいうオッサンというのは、何かと自分を追い回す彼女が首を突っ込まないようと安室が着けた公安の人間だろう。
自分を追い回していただけあって尾行慣れしているから気を付けておけとは言っていたが、やはり気づかれてしまっていたか。

「それで、安室くんから盗み取った追っ手を撒くテクで撒いてたらなんか遊園地がすごい騒ぎになってるし、安室くん探偵だからこの騒ぎを聞きつけてここにきてるかもしれないと思ったんだけど…!!」

ここに至る経緯を話し終えてから花緒里は涙も鼻水も垂れ流しの顔を上げて、ずずっと鼻水をすする。

「ねぇなんで騒ぎの真ん中にいるの!?なんで観覧車転がってんの!?なんで安室くんこんなぼろぼろになってんの!?なんで!!?」

相手が怪我人なのもお構いなしに花緒里は安室の胸をばこばこ叩いては、鼻をすする。
そんな花緒里に安室は何も答えずただ受け止めていた、が。

「ちょっと花緒里さん!?なに僕の服で鼻かんでるんですか!?」

ぐしゃぐしゃになってすすりきれない鼻水を花緒里は目の前の安室のTシャツでかみはじめる。
拭く程度ではなく、全力で、ズゾーッと鼻をかむ。

「ちょっと花緒里さん!?やめてくださいよ…!」
「…………やだ。」
「やだ!?やだってなんですか!?」

安室の静止も聞かず、散々鼻をかんだあと、落ち着くと同時に少し小さくなって話を続ける。

「……安室くん、イケメンでインテリで万能で細マッチョでイケメンだけど、人間じゃん??ゴメラじゃないじゃん??観覧車vsゴメラじゃないじゃん?観覧車vs安室くんじゃん?
車だってぼろぼろだったし、現に今、安室くん怪我してるし……。し、心配するじゃん……!!」

うわあん、とぐしゃぐしゃになりながら言う花緒里の言葉に、かつての友人の言葉が重なる。

『お前だって命は一つ。そいつの張り所を間違えるんじゃねぇぜ?』

目の前の彼女とは似ても似つかない、爪楊枝をくわえた体格のいい男。
豪快に笑ってそう言った彼は、自分より先に逝ってしまった。

『焦りは、最大のトラップだぜ、降谷。』

自分に爆弾処理を教えこんだ彼もまたそうだった。


あぁ、今日は亡くした友人をよく思い出す日だ。


「花緒里さん、」
「ん…?なに、安室くん。」

花緒里は呼びかけられた声に、やっと止まった涙を拭きながら顔を上げる。

「ありがとうございます。」

そう言う安室の表情は、度か過ぎるほどに穏やかで優しく、そして本物の微笑みだった。

「え…?」

その表情に花緒里は目を丸くしたまま固まってしまう。
しばらくすると花緒里ははっとして、やっと安室から離れる。

「なになに!?安室くんなに!?どうしたの!?ついに私のこと愛しくてたまらなくなっちゃった!?」

動揺のあまり謎の動きを始める花緒里の顔は、至るところで光る赤いランプの光を除いても赤く見えた。
目の前で挙動不審になっている花緒里に、安室はクスリと笑う。


「なに言ってるんですか。花緒里さん、帰りますよ。」
「帰るって!?どこに!?安室くんの家に!?いいの!?」
「いつも勝手に侵入してるじゃないですか。」
「あれは侵入だけど…!ついに公認お泊まり!?やったー!!」
「はぁ…。今日は特別ですからね。」




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