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――――秘密の場所がある。
新設、誠凛高校。
新設、誠凛高校の図書室。
新設、誠凛高校の図書室の一番奥にはまず人が来ない。
そんな、場所。
そこが、彼と彼女の秘密の場所だと言うことを僕はずっと知っていた。何しろ中学の時も同じように人気のないところが彼らの秘密の場所だったからだ。
普通、そんなところにいたら気味悪がるかもしれない。人気のないところでひっそりと気配を消しているのだから。けれど、僕が今気味悪がるとすれば彼女がここにいた時間≠セ。
「 常磐 」
本当は他の部員同様、名前で呼ぶところだがそれも今の彼女には危うい。
中学の時と同じく、僕は彼女を名字で呼んだ。
「あ、赤司」
「おばさんが探していたよ、帰ろう」
「でも私、黒子くん待たなきゃ」
彼女は、小梅は今も、
この小梅とテツヤの秘密の場所で、テツヤを待っている。
来るはずもない相手を待ち続ける。こんな夜中になっても、待ち続けている。
「……じゃあ俺≠熈黒子≠待とうか」
女の子をこんな時間まで残しておく黒子は罪な男だな、明日の練習メニューは倍にするか。なんて。
「やめてあげてよ、黒子くんは朝練も居残りも赤司より頑張ってるんだからね」
「冗談だ」
なんて。
「赤司が言うと冗談に聞こえないよ」
「黒子の才能を見出だしたのは俺だ、潰したりしないさ」
――――なんて。
小梅の隣に腰を下ろすと窓から月が見えた。いつもと同じ月のはずなのに、どこか濁って見えるのは何故だ。
「黒子くん、まだかなあ」
純粋に待ち続ける小梅に、柄にもなく泣きそうになった。
お前は本当に罪な男だな、テツヤ。
20120921
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