あの転校初日以来、友達と呼べる友達はいない。確実に失敗した。
あの平和島と臨也に正座させるなんて恐怖の対象以外の何者でもない。そんな私の学校生活は孤立状態に近い。
「倉田若さん、今日の弁当何?」
「野菜」
「サラダに野菜炒めに温野菜? 凄いな、やっぱり倉田若さんは面白いねえ!」
「…」
どうしてこうなった。
弁当を開ける私の目の前にいるのは臨也。野菜ばかりの弁当に爆笑してる。野菜が食べたかったの、悪いか。
――――あの日以来、私は臨也の“お気に入り”だ。
臨也と平和島を黙らせた人間として先生からも特別視されるようになった。
つまり、立場が違えど5年前とほぼ同じ状況。
残ったのはとんでもない疲労だ。
毎日毎日、喧嘩を止めるのは中々骨が折れるし、生傷も耐えないから保健室にお世話になりっぱなしなのである。
唯一良かったと思うのは臨也とこうして話が出来ると言うことか。
「折原、その箸は何」
「くれないの?」
「あげるか馬鹿」
「えー」
「あんたは自分の弁当があるでしょ!」
臨也の弁当はお母さんお手製。臨也ママの作るおかずは魚料理が絶品だ、凄く美味しい。
そんなお手製の弁当を食べずに私のご飯を奪いに来るとは何事だ。
「折原、親に感謝して食べなさい」
「一口も駄目なわけ?」
「……一口だけだからね」
「倉田若さんも俺の弁当食べていいよ、今日さわらの味噌煮」
「!…い、いただきます」
誘惑に負けた。さわらの味噌煮。何故か冷めても美味しい臨也ママの味。
さわらを一口貰って、臨也にはサラダをあげた。
今日の昼休みは平和だ。
07.新緑の眩しい5月、教室にて
――――その一部始終を見ていた岸谷が呆れ気味に一言。
「ねえ、君たち付き合ってるの?」
「「そんなわけないでしょ」」
574/578