「いい加減にしなさいよあんたら!やるならもっと迷惑かけないところでやりなさい!」
「…」
「…」
「聞いてんの!? 自覚あるわけ!? 私だったから良かったけどこれか他の人間だったら警察沙汰よ警察沙汰!!」
「…」
「…」
「返事は!?」
「…はい」
「…えー、君が勝手に巻き込まれただけじゃない。理不尽だろ」
「理不尽はお前だ馬鹿!」
――――仁王立ちで説教かますの、いつぶりだっけ。
5年ぶり? 違う、街のど真ん中で説教したんだった。
内心そんなことを考える。こんな目立つことしたら転校早々孤立は免れない。
分かっているはずなのに口は止まらない。
「はいはいどけてー」
と。
「あっはっは! 凄い光景やなあ!」
「…梓、」
笑いながら、私の隣に立った梓。肩をぽんぽん、と2回叩いて正座する臨也と平和島を眺めてさらに笑う。
「あの平和島くんと折原くんが正座させられてるやん! 倉田さん大物やわあ」
「梓ちゃんこの女と知り合いでしょ? どうにかしろよ」
「折原くん口調荒! あかんで、いつでも紳士的な男こそ理想の男子や」
「先生、意味わからないっス」
「平和島くんも大人しいんやね」
「いや、なんか反射的に…」
「えんやない? 素直なんが1番や」
平和島の頭をわしゃわしゃ撫でた梓は笑いすぎて目の縁に溜まった涙を拭う。
臨也は何もしない梓を思い切り睨み付けていた。何で私を睨まないんだろうか。
「ま、もう授業始まるから立ち。倉田さんもそれでええやろ?」
「…まあ、教卓も直さなくちゃ駄目だし」
「不服そー」
「めちゃくちゃ不服」
臨也を一瞥。
うん、説教足りなくてめちゃくちゃ不服。凄い不服。
「折原、だっけ?」
怒っても“他人のふり”は忘れない。その辺は完璧だ。
嫌そうな赤い目と視線がかち合う。
「そうだよ、俺は折原臨也」
「倉田若、初めまして」
まだ座ったままの臨也に視線を合わせる。
にっこり、笑ってやった。
「お前、うっざいわー」
06.実はこの台詞。
5年前、初めて2人を正座させた時、臨也に言った台詞だ。
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