「酷いよ、若ちゃん」
正直に言おう。
何でこうなった。彩と2人きりの教室で、上手く言葉が見つからない。
「私が臨也くんのこと好きなの知ってるくせに、酷いよ」
「私、何かした?」
むしろ、気い使いまくって疲れてるんだけど。
「私と話してるのに、臨也くん若ちゃんの方ばっかり見てた」
「……え?」
確かに、一度は目があった。
あったけど、それきりでしょ。
悔しそうに顔を歪める彩は、捲し立てる。
「私と話してるのに若ちゃんの方ばっかり見るの。私と話してるのに!臨也くんは私のこと見てないの。手につけてるそれも臨也くんの持ってるものそっくり。つけ始めた日も一緒。協力してくれるって言ったのに嘘だったの?」
「違う、彩落ち着いて」
協力すると了承したのは私だ。
そこに嘘はない。
「若ちゃん酷い!」
本日何度目かのそれを叫んだ彩は教室を飛び出した。
25.1人残された教室は、静かだ。
「利用されてるって言っただろ、倉田」
「……盗み聞きとは趣味が悪いね、平和島」
直後、教室に顔を出したのは呆れたように溜め息を吐く平和島だった。
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