25.1人残された教室は、静かだ。

















「酷いよ、若ちゃん」




正直に言おう。

何でこうなった。


彩と2人きりの教室で、上手く言葉が見つからない。




「私が臨也くんのこと好きなの知ってるくせに、酷いよ」

「私、何かした?」



むしろ、気い使いまくって疲れてるんだけど。



「私と話してるのに、臨也くん若ちゃんの方ばっかり見てた」

「……え?」




確かに、一度は目があった。

あったけど、それきりでしょ。




悔しそうに顔を歪める彩は、捲し立てる。



「私と話してるのに若ちゃんの方ばっかり見るの。私と話してるのに!臨也くんは私のこと見てないの。手につけてるそれも臨也くんの持ってるものそっくり。つけ始めた日も一緒。協力してくれるって言ったのに嘘だったの?」

「違う、彩落ち着いて」



協力すると了承したのは私だ。

そこに嘘はない。




「若ちゃん酷い!」



本日何度目かのそれを叫んだ彩は教室を飛び出した。















25.1人残された教室は、静かだ。




「利用されてるって言っただろ、倉田」

「……盗み聞きとは趣味が悪いね、平和島」



直後、教室に顔を出したのは呆れたように溜め息を吐く平和島だった。







574/578