――――…翌日・学校。
「若ちゃん、それどうしたの?」
「え…?」
と。
彩に指摘されて気付く。
「……え?」
宮里の視線の先は、私の手首。
「…(何で、)」
何で手首に、これが。
黒と白と、ピンクの、ブレスレット。
「それは、俺からね」夢の中のものがフラッシュバックした。あれは夢だったのに、いやそもそもどうして気付かなかったのか。
あまりにも自然に溶け込みすぎて気付かなかった…?
「##NAME1##ちゃん?」
「え、あ…うん、もらった」
「へーそうなんだ」
「うん」
嘘は、言ってない。………はずだ。
もしかして自分で買って、臨也がくれたと投射してしまったのだろうか。それはいろんな意味で酷いな、イタすぎる。
可愛いね、と誉めてくれる彩に曖昧に微笑む。
絶賛混乱中だ。なうだ。
何がどうなってんのこれ。
大丈夫と言ったくせに既に保健室に駆け込みたい。切実に。助けて梓。
と。
「あ、“臨也くんだ”」
「!」
いつの間に、彩は臨也くんと呼ぶようになったんだろう。
突然のことに絶句して、臨也に駆け寄る彩を見送る。
「折原くんと宮里さん付き合ってるのかな」
「え、倉田さんだと思ってた」
「もしかして宮里さんに取られちゃったとか?」
「え、略奪愛!?宮里さん見かけによらず肉食じゃん」
「でも私、倉田さんの方が良かったなあ」
「私も」
「なんか落ち着くよねー」
「雰囲気が好きなんだよねーベタベタしてなくて」
クラスメートの女子の会話が筒抜けだ。
そう言ってくれるのは純粋に嬉しいけれど、彩の耳に入らないことだけを祈る。
彩と臨也を眺めていると2人とも仲良さげに話していて、ああ確かに付き合ってるのかな、なんて。
「…」
「…っ」
目が、合う。
しまった、眺めすぎた。
すると、臨也は何気ない動作で右手で首裏を触る。
その瞬間、泣きそうになった。
24.雑音なんて全て消え失せて。
「(夢じゃなかった、)」
臨也の右手に黒と白と赤。
私の右手に黒と白とピンク。
――――…夢じゃなかった。
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