「………」
「後悔するくらいならしなきゃよかったんじゃねえのか?」
「私の心情は矛盾だらけなんですよ門田くん」
乙女心は複雑で繊細なのよ。
乙女……。
乙女のところで引っ掛かった門田には何も言わないであげよう。
自分でいってて違和感あったから、他人が違和感あって当然だ。
「門田は男前だからなあ、この矛盾分かんないわなあ…」
「男前って…」
――――…図書室・カウンター内。
司書さんが出掛けてる間、丁度その場にいた私と門田が捕まった。
お願いね、と頼まれてカウンター当番ってわけだ。
正直、門田とは“ココ”で大した面識はないものの、互いに認識はしたことがあるらしく初対面にして私が愚痴っていたわけだ。
勿論、あの本屋で会ったことは気付いていない。
「倉田の恋愛、両想いだろ?」
「……」
「両想いなのに倉田が一方的に拒絶してるだけに見えるんだけどな」
「……」
「まあ、人の恋愛にアドバイスできるほど俺は偉くねえけど」
「……ん」
図星すぎて返す言葉がない。
きっと臨也は私のことが好きだ。
勿論私も臨也が好きだ。
でも臨也を拒絶してるのは私だ。
拒絶しているのは、彩に協力してしまったから、だけの理由じゃない。
「私的な、問題だよね…」
「だろうな、聞く限りでは」
彩は友だちだ。
臨也は、好きだ。
好きだ、好きだけど、好きなんだけど、好きなのに。
「(私が保健医じゃないだけで)」
何でこんなに違和感があるんだろうか。
矛盾があるからすっきりしないんだろうか。
明らかなタイムラグのこの状況を、”疑問“を持たずに受け入れたからこんなことになるんだろうか。
19.音を立てずに立ち上がる。
こんなこと話せるのは梓しかいないだろう。
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