「わかちゃ」
「若、ライティングの課題なんだけどね…」
「え、ああそこ、合ってるか分かんないけど…」
「あ、そうなるの?」
「多分ね、違ったらごめん」
臨也を遮って、彩が課題を持ってきた。
多分偶然。
彩、ちょっと吃驚してたし。
これには臨也も驚いたみたいで一瞬怯んだ。
「若、ありがとう」
「ううん、いいよ。その代わり、後で数学の課題見せて。計算式合わない」
「数学だめだよね」
「一生苦手だと思うわ」
「あはは!」
「わかちゃん」
彩と私を割り込むようにして、臨也は私の机に手を置いた。
「………何?」
「最近お昼どこにいるの?」
眉目秀麗。優男。
彩の前だからか、その姿勢は一切崩さない。
「あんたには関係ないでしょ」
そう――――あの彩の発言から私は臨也とお昼を食べるのをやめた。
人通りの少ないところで彩と食べている。
臨也が知っている行動範囲じゃないから探し当てるのは難しいかもしれない。
「あ、あの、折原くん、ごめんね若に話しかけるの遮っちゃって」
「いいよ、偶然なんだから」
にこにこにこにこ。
崩れない。
「折原くんって良い人だね」
「買い被りすぎだよ」
全くだ。そこには賛同しかねるぞ、彩。
18.課題を持つ手が力んだ。
彩と話ながらも感じる臨也の視線は無視した。
574/578