長い廊下を歩いてた時だ。
前から人類最強の男が来るのが見えた。
(うわ)
彼は私にとってあんまり会いたくない人だ。
なにせ愛想がない人である。
話が続いたためしがないし、いつもどこか人を馬鹿にしている気がするのだ。
(なにも起こりませんように)
会釈だけして、廊下の角を曲がろうとしたときだった
「おい」
(げ。)
運悪く、私は人類最強様に話し掛けられてしまった。
「はい、なんでしょうか?」
「この書類をエルヴィンに渡せ」
「…わかりました」
分厚い紙がまた私の手に渡った。これで今日何度目だろうか、手には廊下ですれ違う度に出会う私より何倍も偉い方々からいただいた(押しつけられた)書類がすでにあるのに。
(ため息が出そう)
次の壁外調査が間近に迫っているからみんな忙しいのはわかるがなぜ私にみんな頼むのだ。
「……」
リヴァイ兵長から頂いた書類をちらりと見るとなにやら難しい単語がつらつらりと並んでる。
(っていうかこの書類が見えてないのかしら。重いのに…)
「………」
足を進めようとした時ふと前を見れば、その場から動こうとしないリヴァイ兵長。
「あ、あの。まだなにか?」
「不服そうだな」
「……いいえ」
あ、面倒な事になりそう。なんて考えがよぎる。
「明らかに面倒だという顔をしやかって」
「…すみません」
実際に思ってました!なんて言えるわけも無く、ただ心のこもってない謝罪だけを口にすると今度は彼の眉間に皺が寄る番だった。
「口だけだな」
「すみませんが私急いでるんです。態度が悪かった事は謝りますがそこを退いて下さい」
「てめぇがどけ」
「…………」
いらっ。
なんでこう彼は偉そうなのだ。
いつもそうなのか?それとも今私が機嫌を損ねさせてしまったから??
「はぁ…。失礼しま、すっ……!!」
わざと聞こえるようにため息をついて横を通りすぎようとした時だ。
何かに私は躓いた。
「きゃ!」
それが彼の足だと気付くのに時間はかからなかったのだけど。
「お前は、躾がなってないようだ」
「なに、するのっ」
バッサバッサと紙が散らばる
「貴方、いい加減に……!」
「目上の者には、その態度で合ってると思うか?」
「だからってこんなこと…!」
「躾のしなおしが必要だな」
「っ!」
顎を持ち上げられる
あの少し釣り上がった目と合う
「後で俺の部屋に来い。言っとくがてめぇに拒否権はない」
あぁ、なんて女王様なんだ。
(そして、なんで、私はっ)
きゅんとしたんだ。
えむのめざめ
(兵長、私今昔のこと思い出しました)
(なにニヤニヤしてやがる。気もちわりぃ)
(んふっ。私はあの時兵長に恋をしたんです)
(………)
(兵長になら私、蹴られても、いい!)

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