○年×月△日。
この町未曾有の大豪雨。
並盛の梅雨は、思いがけない形で幕を開けようとしていた。
「あーマジうぜぇ」
獄寺はいかにも不満そうに眉を潜める。
「本当だよな」
そう呟いたのは、キャバッローネファミリーのボス、ディーノだった。
「お前と同じ傘に入っていることが、一番気に入らねー」
「なあっ!?」
ディーノが白目を向いて驚く。
少し恥ずかしかったのか、頬が赤く染まっていた。
「そ、そんなこと言うなら…傘に入れてやんねーぞっ!?」
確かに今日、獄寺は家に傘を忘れた。そして、最近日本に来たディーノが、学校まで迎えに来てくれたのだ。
荷物も半分持ってくれるし、傘もなるだけ自分の方に傾けてくれる。
だが、そんな優しい彼に溺れていく自分が気に入らない。
別に全く感謝してないわけではない。
だが、獄寺はそんな安い脅しに伸されるような男ではなかった。
ただ少しだけ、彼に甘えていたのかもしれない。
「はッ。俺は良いんだよ。お前が勝手に来たから入ってやっただけだし?その代わり、もう二度と家にあげてやんねー」
良い終えて気づいた。
最後の言葉は余計だった…
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