こねた置場 | ナノ



こねた置場
ろくなもの置いてない。
基本水木たまに他

▽佐松?
まだ蝉が辛うじて鳴いている、しつこく暑さがまとわりつく屋内で。自分よりずっと小さい少年の眉根は寄せられていた。きっと私も同じような顔をしているのだろう。
「メシア私は」
「お前の意見なんて求めていない、佐藤」
「私もあなたの命令なんて聞く気ないです」
普段とは違う反論に、少年の苛立たしげな表情がわずかに崩れる。
「何だと?」
「一方的なお節介です、勝手に心配している。ただ感情のままの行動です」

「…鬱陶しい」
ふいと顔を背ける動作、その横顔はまた不機嫌そうだった、というよりは「困惑していた」に近い。たったこれだけのことで。この並外れた知能の持ち主は、
「可哀想だ」
「余計な世話だよ」
「ええ、そうです」
逃れようとする動作を阻止し、抱え上げる。咄嗟にバランスを崩さないよう私の首筋をつかんだ手は小さく、うっすら汗ばんでいた。
そのまま食い込む爪の感覚を確かめながら、小さく呟いた。
「私の勝手です」
聞こえていたかは、知らない。


2011/09/10 21:08


▽ゆめにっき/窓付き
がちり、今日もドアノブは噛み合わない音を立てている
きっと部屋から出るつもりもないし、意思がなければ開くつもりもないだろう。だめね、むりよ、リズムよく言葉に出せば楽しさすら出てきた気がした。笛のリズムにおあつらえ向きな歌詞かも知れない、なんて夢の中思い出して(心の中で)にっこりと笑った。
ああ、夢の中でドアを開ければ出られるわ、笛を吹きながらリズムをとって、がちゃりとドアノブが開くのだ、そして私は今日もまた。

(ゆめのなか)


2011/07/21 01:04


▽佐松?
質の悪い子供ですねと悪態をつくと口の端。小さく上がって私を見ている 気まぐれに掴んでみてはあちらこちら触って、叩いて、おもちゃを扱う風に、無造作に。
「痛いんですが」
「だろうね」
ネクタイも前髪も、スーツの上着すら小さい手が掴んで寄せたしわにまみれている「よほど楽しいんですね」しわを付けたその手は今は耳の裏を伝って襟足をくすぐる風に指先で辿って、生え際の産毛をふつりと抜いた。
「佐藤」
返事をしても続きは来ない。それ以上の催促も出来ない。ただその細い指先をいつの間にか私の唇へと押し当てて口の端。まだ吊り上がっていた。


2011/07/21 00:56


▽ゆめにっき/窓付きと窓付き( 夢の中)
言葉を飲み込んだ が正しい。
呼吸を忘れた が正しい。
ただ下を向きたいのに、少しばかりの意地の維持 まるで何もない様な顔をして、さァ少しばかり微笑んでごらん。滑稽だねと指差して笑う鏡越しの私をご紹介して差し上げるわ 初めまして、彼女は私と申します いつも夢の中、ただたださ迷い漂っては(ぐさり)

あら、


2011/06/11 22:35


▽松下と山田
世界をまっぷたつにしたんだ。うん、実際に割ったわけでも、支配したんでもなくて。
僕の中で、まっぷたつに。
「で、もう片方をくれてやったと」
「まあそんなところ、かなあ」
絶えずいろんな世界に掻き回されてぐるぐる、境界線ぎりぎりの外側、皮一枚くらいってところから外側は世界のためにって、しっちゃかめっちゃかで、唯一どうにか保っていた部分なんだけど。
「分けてやってもいいって思ったんだよね。このために取っておいた?うん、正にとっておきの半分!って感じだね」
「ふぅん」
そうかって一蹴してしまうんじゃないかってくらいにあっさりとした返答は予想通り。けれどもその反応に反して話を受け止めているのも予想通り。
「お前の半分も明け渡された奴の同情するぜ」
「僕もしてるよ。あいつは僕で、僕もあいつだからさ」
「そいつは結構」

(あいつ=金髪糸目)


2011/06/04 21:45


▽ゆめにっき/窓付き
はためくスカート、膝の上で揃った生地の折り目がはたはたと。
揺れるみつあみ、綺麗に編まれた髪を留めるゴムがちらちらと。
「窓付きちゃんどこいくの」
「窓付きちゃんどこいくの」
ちょっとそこまで。
「何でそんなもの持ってるの」
「何で服は赤ばかり?」
だって赤なら汚れても判らないじゃあないの。
(聞かなきゃいいのに、おばかさん)


2011/05/11 00:26


▽だれにでもどうぞ
それは一体何なのだらうか、さう呟いて、彼は首を僅かばかり曲げた。サア、私が知り及ぶ事では。
ぢやあ、誰が知つてゐると云ふのだね。さあねえ。


2011/05/11 00:19


▽現ぱろ/佐藤と松下
何、してんです。暗いリビングにぼんやりと広がる小さな光、時折かちかちと押されるボタンは、ご丁寧にもマナーなのか飾られた音はなく。ソファーに投げ出した四肢はだらりとしている。
私の声に返事もせず、ただ、呼吸のリズムも聞こえず。じっ、と息を止めたかの様に。操作の停止に伴い薄暗くなったディスプレイに薄ぼんやりと照らされた顔は私を見つめている。つややかに眼が、きろりと。
「目が悪くなりますよ」
電気のスイッチは手の届く距離にある、しかし押すなと言っている気がして伸ばした手をまた戻す。

ドアの枠を挟んでの呼吸 仕切を境に。廊下は明るく、向こうは、暗い。
少しだけ引き込まれそうな錯覚に陥る ぎい 手を添えているドアが重心の移動を知らせる。


「ぼっちゃん」
返事はない。ただ微かに照らされた青白い頬とてらてらと反射した眼だけがいつまでも。


2011/03/18 17:11


▽松下と佐藤
待つ子供 憤る大人、立場は最初から反対だった。無様だと誰かが言っていた。

子供がいた。いつも背中を私に向けて、微動だにせず、すこし丸めた背中は無防備で、少し腹立たしい。
大人がいた。いつも非難から逃れようとし、絶えず耐えず、わざとらしく腰を折る、とても鬱陶しい。

声を出した。反応は無かった。一拍 おいて 遂に歩きだした。

憤る大人、ようやく正面に回ったが残念ながら子供は案山子でした。子供は待ってはいなかった。足元には藁が積んである。からからと風に当たって乾ききった音、靴に当たって僅かに散らばる、少しばかりの腹立たしさを、自分の責任を押し付けんばかりに、
(乾いた藁はあかあかと)

下火になった勢いと とどまらない驕り、どちらも多少たちが悪い。厄介だと誰もが言っていた。


2011/03/06 21:55


▽鬼太郎から松下へ
構やしないさ。言葉なんて惑わすだけだよ。惑わされたいから世界を、世界の為に言葉をつくる。自己投影だよなあ、救おうと躍起になってる。望んでないかも知れないというのに。
つくったもんなんて全部自己投影だって。おかしいなあ。あいつ、幸せそうじゃあないよ。薄ら笑いの下引っぱがしてみたらどうなっているかねえ。
(のっぺらぼうかも知れないよ?)

そりゃあえらい近代的なのっぺらぼうも出来たもんだ。


2011/01/31 02:16


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