※「キスからはじめる恋愛協定」の続き(のようなもの二つ)
※真凛♀



[ファーストネーム]


「松岡さん」

「……」

「あれ、…もしかしなくても不機嫌?」

「別に」

 左右に首を振って、松岡さんは目を反らす。完璧に拗ねちゃってるなあ。

「…俺、何かしちゃったかな」

「……名前」

「名前?」

 俺がそうきくと、そっぽを向いてしまった彼女の耳が、心なしか赤い。

「凛、でいい」

「…ええと」

「下の名前でよべって言ってんだよ。……真琴」



[セカンドキス]


「凛……りーん」

 机にうつ伏せになっている凛から返事はなくて、かわりにすーすーと規則的な寝息がきこえてくる。

「寝ちゃった」

 起こさないように隣の席に腰掛けて、無防備な彼女の髪を撫でる。

 俺と彼女の恋人という関係に恋愛感情は伴わない。少なくとも彼女は。彼女にとって俺は、きっと友達。
 だから、ろくに凛に触れたことはないし、出逢ったあの日以来キスもしていない。

「凛。俺さ、本当に好きになっちゃったよ」

 いつからだろう。"ごっこ"だけじゃものたりなくなってた。
 今だって、できることなら彼女を抱きしめて、自分も眠ってしまいたい。

「好きだよ」

 小さなリップ音とともに、凛の前髪にキスをした。

 本物の恋人にしてほしいんだ。


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