違いなどないのだと。
2015/11/08 16:48

考えることをやめたかった。
欲しい答えなど手に入らないと分かっているから、待つこともやめたかった。
だから捨てようと思った。
嫉妬し、怒り、涙する自分が醜いから。
すべてをやめて、終わらせたかった。

日常とは、感じにくいものだ。
当たり前の事柄を、当たり前にしてしまった事柄を、当たり前ではなく、特別なのだと、再確認することの大変さを、僕は理解していなかった。
何度考えても後悔しかしない。
それはすなわち間違った答えだったからだ、そう感じるからだ。
それを何度も繰り返してきた。
必死に守ってきた日常だったが、後悔しかしないのならば、と。
手放した。

手放して初めて、縋った。
彼女を失いたくないと、心から思った。
そんなことを思ったのは1年ぶりに近い。
それほど昔の僕は彼女を好きで、愛していた。
今の僕らは彼女が言った通り「曖昧な特別」でしかないのだ。
それをなにか他のものに変えたかった。
僕は、今も昔も、彼女と恋人になりたかったのだ。

昔、逆恨みだと分かっているけれど、と前置きをされたうえで文句を言われたことがある。
その友人とは今でも親しい。
当時僕にはほかに大切な人がいた。
友人は大切な人を手放した直後だった。
恋というものは、勘違いから始まるということのが多いのではないだろうか。
友人も、例外ではなかったと思う。
僕は彼女に好意を抱かれ、僕はその好意に応えることができなかった。
友人がそれを口にしたのはだいぶん後のことだった。
だから僕は問うた。
「あなたは僕とどうなりたかったの?」
と。
どうなりたかったんだろうね。そんな感じの、曖昧な答えだったと思う。

その友人には意思がなかった。
だが僕には意思がある。
彼女と恋人になりたいという意思が、ずっとある。
その差がありながら、何も違いはないように感じる…。



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