ジョニー視点。ゼルへの思い。
少し無機質なジョニーの感情とそれが悲しいゼル。
ディスタンスと対作品のようなそうでないような。


零れ落ちる





零れ落ちてしまう、と思った。
君から見た俺は一体どういう風に見えるのだろうか?

君に愛しているというと、君は悲しい顔をした。
君が好きだというと君はいつもまつ毛を伏せたし、君が望むならおれはどんなことだって出来るというと、きみはただカラカラと音のなるような声を出して笑った。

俺は今までどんなことをしてきただろうか?
俺の中身は空っぽなのだろうか、君の望むものを与えてあげられないのだろうか。
俺は単に、君に幸せになってほしいだけなのに(それは俺自身を犠牲にしてでもという意味だった)。

「お前って黒が似合わない気がするよ」
と君が言った。

俺はいつも着ている鎧の下に黒のキャンベゾンを着ていたので、それが似合ってないという意味だろうかとも思った。

それから俺は黒髪だから、黒が似合ってないとなると、それはなかなかに致命的だなあと思った。いっそ金髪にでもしたら君は笑ってくれるだろうか、

「お前、それバッカみてぇだよ」なんて言って笑ってくれるだろうか?

黒が似合わないとはどういう意味だろうか。

「お前って、だって、真っ白だもん」

君が言った。
君の声。
君の顔
君の笑顔
君の存在
君の髪の毛の香りや
君のその気の強さや
君の少し口が悪いところだとか
ともかく

俺はそのすべてがとても好きだと思う

君には俺はどう映っているのかな。

「俺はそんなにきれいじゃない」
と言う、そう言う君は
俺にとって、とてもとても美しく見える。

「真っ白なのは、ゼルの方じゃないか?」というと、君はまた乾いたような音を立ててカサカサと笑った。

ああ、君の欲しがるもの、俺は何一つ与えてあげられないんだ。
そう思って、俺はとても悲しい気持ちになる。
どうしようもなくて、俺は目を閉じた。

「ねえ、ゼル。君への想いがあふれすぎてしまって、零れ落ちてしまいそうだ。」


END.


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