※ケリ姫スイーツ、ジョニー×ゼル。
夢からの導き】の、付き合ってからしばらく経ってる二人。



ディスタンス





俺のことを見て欲しいなんて言われても、困ってしまう。

『好きだよ』とか、『愛してるよ』
なんて、散々言われて聞かされたけど、なんだか俺にはその言葉に実態を見出せなくて。

どう反応していいのか、あいまいに笑ったり流したりばかりしていた。
最近では慣れてしまって、もう聞き飽きたよ、なんて冷たくあしらってしまうくらいだ。

だから、『俺のことをもっとよく見て』なんて。

そんな話をするのなら

ちゃんと自分から、俺にお前をよく見せようとしてよ。
そう思うのは間違ってないはずだ。

『そんなこと言われてもさぁ。お前が俺に、お前のことを教えてくれないんじゃん。自分で隠してるのに、見てだなんて、ずるいよ。』

そう言うとジョニーは少し困ったみたいな悲しい顔をした。俺はジョニーのそういう顔が、少し好き。というより、笑ってる意外の顔が好き。

だってこいつ、いっつもおんなじ笑い方なんだ。貼り付けたみたいな笑顔で、人の顔色うかがって。なんだか俺は、いつもそれが苦手だった。

付き合う、ってことになってから、前よりもっと苦手になった。

見てるとイライラして仕方がなくて、あぁ、どうしてそこまでして、自分を隠すんだろうって。

気持ちが悪かった。
俺にはない、綺麗すぎる、彼の持つ笑顔の仮面が。

彼の内面を包み隠すその笑顔が。
俺を好きだというその口が、愛想よく、誰かに綺麗に弧を描くたびに。

俺はジョニーの言ってることなんて、何もかも嘘なんじゃないだろうかと疑った。

あの日、初めて俺を好きだと言ってくれたことも、毎日のように彼から俺に降り注がれる『かわいい』『好きだよ』『愛してるよ』。そのセリフも。

そうだ。セリフにしか聞こえない。
だから言われても、流してしまっているのかもしれない。
そんな気がする。
だから、

『ジョニーから自分自身のこと見せてくれなきゃ、わかんないじゃん。それに、お前が心を開いてくれないままじゃ、俺だって自分のこと見せづらいよ。』

そう伝えた。
ジョニーは俺の目をじっと見た。
綺麗なブルーの瞳。ジョニーは本当に綺麗な顔をしている。整った顔。でもそれだけじゃ、俺の心は動かない。俺は、この綺麗な顔の下に、本当は何があるのかが知りたい。

『ゼル、俺は…』

ジョニーが口を開く。
その次に出る言葉が嘘八百か真実か、まだ俺にはわからなくて、少し眉をひそめて下唇を噛んだ。

『無理なこと言ってるのは、わかってるよ。俺は、君に俺のことを知って欲しい…だけど、嫌われるのが怖いから…』

『…だから、見せたくない?』

『だから、…あつらえてしまう。君の、君の前では…綺麗にいられるように。』

『でも、俺はそれじゃ嫌なんだよ。上辺の綺麗さを見せられたって、本当の事、見えてこないよ。いつまでたってもお前が全然わかんない…わかんないよ。』

『あぁ、嫌わないでくれよ。でも、俺はゼルのこと、本当に好きなんだよ。』

同じ言葉に俺は押し黙る。あぁ、今日も仮面を外してくれない。きっと俺は信用されてない。俺はそれがすごく辛い。

嘘でも真実でもない、逃げ出すような曖昧な答えなんて聞きたくないのに。

『なんでだよ。』

『…』

『なんで教えてくれないの?そんなに俺が信じられないわけ。』

『違うよ、ゼル…俺が弱いだけだ』

『そんなの聞きたくないんだよ!俺だって、俺だってジョニーが好きで、好きだと思うから…だから、こうして今話をしてんじゃねーかよ!』

『…ごめん…』

『あやまってんじゃねーよ、気持ち悪い!気持ち悪いよ、おまえ、きもちわるい!気持ち悪いんだよぉ!』

『…』

俺はジョニーの煮え切らない態度にいらいらして、つい酷い言葉をぶつけてしまう。

ちがう、こんなことを言いたいわけじゃない。
俺だってジョニーの言ってることはわかる。誰かに自分を見せることはとても難しい。ましてや彼の性格なら、俺なんかよりなおさら辛いことかもしれない。

それはわかる。でも…気持ちが収まらなくて。信じてもらえてないのかと悲しくて、コントロールのきかない感情を、そのまま言葉でぶつけてしまう。

俺は彼の目も見れずに下を向いて、小さくつぶやく。

『なんかもう、辛いよ…ジョニー』

『ごめん…』

ジョニーが腕を伸ばして俺を抱きしめる。触らないで欲しい。
だけど俺は振りほどけない。

なんで、なんで、なんで、こんなこと、こんなことをしてくるくせに。
俺のことを優しく抱きしめて、髪を撫でて、なのに、なんで、見せてくれない?

やめて、怖い、怖いよ、ジョニー。
理解できないお前が怖い。

『お前、気持ち悪い…』

『ごめんなさい…』

謝るくらいなら、はやくお前を見せて欲しいのに。



end.


なかなか前に進めないジョニゼル。
もがけもがけ〜


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