3.







「……やっぱり私、ここに来て良かった。」



笑顔でそう言う麻夜に、
俺は嬉しくなって、また笑っていた。




「…そうか。歓迎する、麻夜。」


「へへ、ありがと。」




お互いに微笑み合って、
出会ってまだ一日なんて思えない程に互いに心許し合えた。


「ああ、よかった。
打ち解けてるみたいですねー。」



――――――突然、
本当に突然、前触れもなく、そこには一人の男が現れた。

これには俺も驚いて、麻夜と同時に声のした方向へ振り向く。



「し、死神さん!いつからそこに!?」




麻夜は突然の来訪に驚いては居たが、
どうやらそいつは知り合いらしく、
存在自体には疑問を持っていない様だった。



「ああ、そうか。こいつが麻夜を連れてきたやつか……。」


「へ?あ、うん。そう。
名前分かんないから死神さんって呼んでるの――――って、うえ!?ナルト!?!?」



麻夜の様子に、「ああこいつが……。」と納得した瞬間、
俺は瞬身で現れたあいつに、部屋の隅まで拉致られてしまった……。



慌てる麻夜と、落ち着き払ってにこにこしている男。


そして、俺を抱えて麻夜にクナイを向ける奴に、
俺ははぁ。っと聞こえる様にため息を突いた。





「はぁ…。木宅、あいつは突然現れたが敵じゃない。
麻夜の保護者的な存在だ。
クナイを仕舞え、麻夜に向けるな。」


「あれ?僕に向けるなーはないんですか?
でも優秀な護衛さんですね、ナルトくん。」



「……あんたにも、悪かった。」



「いーえ。」




奇妙な格好のあの男に武器を向けるのはどうでもいいが、
麻夜にも向けているのが戴けない。

俺はさっと木宅だけに殺気を向け、
クナイを仕舞うように促した。


軽口を言う男に、心を込めずに詫びを言い、
俺は木宅から離れ、麻夜の下へと戻る。




「麻夜、悪い。こいつは俺の護衛にじじいが付けてる、木宅って暗部だ。」



まだ状況が掴めていないらしい麻夜は、
ぽかーんとした顔をしていた。



「え?護衛に?……えっと、もくたんさんを?」


「はは、違う麻夜。『もくたく』だ。」



「……あ、ああ、もくたくさん……。ハジメマシテ?」


麻夜が木宅さんに向かってお辞儀つきでぎこちなく挨拶をすれば、
木宅はぺこりと頭を下げていた。


少し愛想の悪いその様子に、
いつものあいつを思い出し、まだ警戒を解いていないのかと呆れた。


「え、いっつも護衛が付いてるの?」


「まあ、大体な。
いつもは白狐ってやつが付いてるんだが、白狐が俺の側を離れる時は木宅が来る。」



「そ、そうなんだ……。」




麻夜は納得の言葉を述べても、まだ理解に時間が掛かるらしく、
俺と木宅を交互に見ては、考え込んでいた。



「……悪い、驚かせてしまったな。
あの、麻夜が言う死神って奴が気配無く現れたものだから、
じじいからの任務の為に動いたんだ。」


「つまりは死神さんが怪しくてナルトを護る為に来てくれたんでしょ?
謝ることないよ、突然現れた死神さんが悪いんだから。」


俺が突然の事態だった出来事に対して詫びれば、
麻夜はけろっとした様子で、
その事自体には何も思っていない様だった。





「……麻夜さん、それってあなたを心配してやって来た僕に対して酷くないですか……?」




「死神さん、来てくれてありがとね。」



ふてくされた男に、麻夜はあやす様に礼を言うと、
男は満足したようで、本題に取り掛かっていた。



「どういたしまして。
今の処は順調の様ですが、困ったこととかはないですか?」



ない、とはっきり答える麻夜に、その男は少ししょげた様にしていたが、
「わかりました。」と言い、また何処からともなく、さっと消えていってしまった。

結局なんだったんだとも思ったが、
バイバイ、と納得して見送っている麻夜を見て、
用件はそれだけだったのだろうと、
俺も無理矢理納得した。




しかし、あの男―――――、
この空気、どうしてくれる……。


木宅は空気な様に動かず気配を消してしまっているが、
去るタイミングを逃してしまった様子だ。


麻夜もこの状況でどうしたらいいのかと困っていた。



「…………、えーっと、そう言えば私起きた時のそのままだった。
ちょっと顔洗って着替えてくるね。
木宅さん、もう会っちゃったし、
どうぞそのまま寛いでて下さい。」



そう麻夜は俺と木宅に声を掛けると、さっさと先程俺も拝借した洗面所へと向かってしまった。




俺は仕方無しに木宅に座れと言い、
使っていた寝具を片付ける。


どこに仕舞うのかまでは分からなかったので、
取り敢えずは畳んで部屋の隅に置いておいた。



言う通りにその場に座り、
微動だにしない木宅は何だか可笑しかったが、

木宅は俺の態度の変化に酷く驚いているらしく、
面越しにも慌てているのが分かった。




麻夜が身支度を済ませて戻ってくるまでの数分間―――――、

俺は何から話してやろうかと、
高揚しながら驚く木宅を見据えた。







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