1.






俺が逃げ出したい、と恥ずかしさのあまり思っている間、
麻夜は何かを考えているようだった。


話辛そうに、どこから切り出したら良いのかと悩んでいる様に。

そんな麻夜を見ると、


はやり聞かなければ良かったのだろうか……

と後悔してしまう。




「……ナルト、私の話を信じてくれるか分かんないけど……、」

「――――信じる。」



「っえ?」


「―――俺は、麻夜を信じる。信じ続けると決めた。
だから、麻夜が言うことは例えどんな奇想天外で有り得ない話でも、信じるさ。」




麻夜が難しそうな顔をして、
「信じられない話」というのをしてくるのだなと思った。


麻夜が話すのに戸惑っていた理由がそれなんだと思うと、
少し安心した―――。


俺は、麻夜の言葉を遮っても、
「信じている」と告げる。


「麻夜を信じる」という事は、
もう俺の中の決定事項で、揺るぎ無い真実だ。


俺は………、どんな事であっても麻夜を信じてる。



それを、麻夜にも解っていて欲しかった。




「……ありがとう、ナルト。
すごく嬉しい。
私も、ナルトの事を、何があっても信じれる力になった。」



「………俺を、信じる…力?」



麻夜は嬉しそうにそう言った。
俺には分からない言葉だったが、
麻夜に俺の気持ちが伝わっているという事がただ嬉しかった。



「そう。―――私は、ナルトに何があっても信じれると思ってた。
でも、それは私の独り善がりで…。
だから、ナルトが私を信じるって言ってくれた時に、
私はもう君を信じることに躊躇うモノが無くなったの。
私の力になるの。……だから、ありがとう。ナルト。」



麻夜が泣き出してしまった。

いきなり泣き出した麻夜に焦ってしまったが、
悲しくて泣いている訳ではないと、

麻夜の表情が伝えてくれる。

まるでその涙は、

麻夜が幸せであるというのを証明する為のモノの様に、


―――感じた。



麻夜は何かを言いたそうに口を開くが、
出てくるのはむせぎ声ばかりで、少し苦しそうだった。




苦しそうに声を我慢している麻夜には流石に焦った。
聞き取りにくい言葉の中で、
「ごめん」と謝っているのを聞き取った。




気が付けば俺は―――――、


――――麻夜をぎゅっと抱き締めていた。




「〜〜〜〜〜〜っ!!」



焦り出す麻夜には少し笑ってしまった。

止まらない涙に美しさを感じる。




泣いてる麻夜を見たくないと思っているのに、

流れるその涙をいつまでも見ていたいと感じてしまう。



「大丈夫だから。」と言えば済む事柄を、
俺は麻夜を抱き締める事で現した。


………俺が只単に抱き締めたいと感じているだけかもしれない―――。



麻夜の身体は温かく、ほのかにいい香りがした。

涙の滴が、丁度俺の肩に辺り、
少しずつ湿っていくのを感じる。



離したくないな…………。

そう感じていた矢先、
麻夜の涙は静かに止まり、
苦しそうに上下していた肩は落ち着いてしまった。




「…………ありがとう。もう、止まったよ。」




―――名残惜しい……、

そう思ったが、俺はそっと腕の拘束を緩める。


そうすると、麻夜は腕で俺を押して、さっと腕の中から居なくなってしまった。




俺は、その居なくなった状態に寂しさを感じたが、
麻夜が居た証の様に湿った肩を感じて、

何だかくすぐったい気持ちが生まれる。



麻夜を見れば、
紅く顔を火照らし、先程とは違った荒い呼吸をしていて、
笑ってしまった。



麻夜の服に残る抱き締めたために出来た皺に、
俺は、何ともいえない優越感を感じていた。







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