5.







「…………何故判った?」




俺は必死に平静を取り繕うとするが、
自分で思っていた以上にショックが大きかったらしく、

もう表情を保つので精一杯だった。


声も、微かに震えてしまっているのが、
自分でも分かる。


少女に知られてしまった。
知られて、侮蔑されても良いと思っていた気持ちは、
本能ではあの少女にだけはされたくないと訴える。



少女の返答など聞かずにさっさと逃げてしまおう、
そう、頭の中では叫んでいるのに、
足が、手が、動いてくれない……。


まだ、心の奥底では、
少女への期待が蠢いている。



そんな俺の様子が分かっていないのだろう少女は、
呑気に答えを考えながら頭を捻っている。


もう去ろう、心でそう決意して、行動に出ようとした時だった。

少女は発育しきっていないつたない口から、
考えながらの返答をくれる。


「えー、あー、う〜んっと〜……。」



もう去ろう、そう今決意したばかりなのに、
少女の声に、すぐに打ち砕かれてしまった。


「ナルト、が好きだから・・・?
ちょっと顔の造りが違うし、成長してるし、髪色や目の色も違うけど・・・、
う〜ん、直感?うん、シックスセンスでっ」




ナルトが好きだから。


そう、辿々し気に言った少女の言葉が、
頭の中を巡っていく。


結局少女にも答えは解らなかったらしく、
曖昧な表現で言い切ってしまう。


好きだから―――――、

そう、他人から言われたのは初めてかも知れない。



俺は、鏡を見ずとも、自分の顔が紅くなってしまっているのが分かった。


少女はそんな俺の反応に首を傾げるが、
さして気にならない様に振る舞う。


「て、ゆーかっ、あの子は!?
お家に帰っちゃったのかなあ?」



本来の俺の姿を捜しに、勢い良く立ち上がろうとする少女の腕を、
力を込めて引き留めた。


思い余って、そのまま座らせてしまったが、
柔軟な子どもの身体は、その変に座り込んでしまった体勢も、難なく受け止めていた。



「あー、あの…?」


俺の行動に、少女は首を傾げて問い掛けてくる。


「……お前が探そうとしている奴は、ここだ。
――――俺だ。」



俺は、躊躇いながらも、
自分の事を明かす。

少女なら、大丈夫だ、と心の奥から、
誰かの声がする。



「………変化?してるんですか?」


「っ、そうだ。」



少女の問い掛けに、俺は肯定する。
大丈夫だ、大丈夫だ、と言い聞かせながら。




「………な、何故?」


「此処が何処なのか、お前が俺に危害を加える人間なのか、
分からなかったから…だ。」



………嘘を言った。
最初から拒絶の眼を見るのが辛かった、なんて
そんな弱いことは言いたくなかった。


「そう、ですか……、はい。」



少女は俺の嘘の言葉に、少し動揺をしながらも、
きちんと受け止めていっていた。

頭を整理していくように少し考え込んでいたが、

暫く待てば、考えが纏まった様で、確認を取る様に質問をしてくる。



「あの少年はあなた?
え、ってことは、あの子は……。」


「あなた、……ナルト?
木の葉の、うずまきナルト――・・・?」




少女に自分がうずまきナルトだと肯定するのは二度目だというのに、

俺はまだ震えながらにしか返答出来なかった。


「…………、そうだ。」



そう肯定すると、少女は黙ってしまう。


もしかしたら、と期待したが、
やはり俺を助けてしまった、というのは
受け入れ難かったのだろうか……。


俺はいつも裏切られるのに期待してしまう自分に、
同情することも出来ない、と渇いた笑いが零れてしまった。








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