2.
「あ〜っ、つぅ……。いったーい!なに!?!?」
次に気が付いた時、俺は腹部に蹴られた様な衝撃を感じた。
奴等が態々死体を確認しに来たか…?と薄く目を開ければ、
一人の小さな少女が、
俺の身体に蹴躓き転けてしまったらしい。
いたーい!と声を上げながら、すぐ近くで踞っていた。
何故、こんな町外れの、しかもこんな時間に、
出歩いているんだ……。
忍の変化した姿かと思い、少し警戒をしながらも、
深傷を負っていた上に、上から落ちた衝撃も加わった身体では、
指一つ動かすことも困難だった。
忍だったら、死ぬな………。
俺は自分の死が近いのかもしれないことを感じながら、
足掻くこともせずに、瞳を閉じた。
――――もう、いい。
頑張ろうとする気力は、一切湧いてくることはなかった。
「………わあを。」
少女は俺から溢れる血を見て、淡々としていた。
「う〜ん……、どうしたもんだ・・・。」
うねりながら、自分の服を破き、
怪我をしている箇所に巻いてきた。
………手当て、のつもりなのだろう。
この行動で、俺は少し警戒を解いて、気付かれないように少女を見る。
月光に彩られている少女は……、とても、綺麗だった。
思わず魅とれて、
時が停まった様な感覚になった。
まだ年端もいかない所か、幼児である少女に――――。
その瞬間から、
俺の中に、生きたい―――という欲望が生まれた。
それは身体中を巡り、
九尾の力を凌ぐ程の速さで、傷が治っていっていた。
………現金な身体だ。
俺は自分の事なのに、他人をみているかの様な感覚で、
それを感じていた。
「あ〜、ピンチに必ずドラえもーん!!って叫ぶのび太くんの気持ちが痛烈に分かるっ」
少女はパニックになっているのだろう、
訳の分からない事を口走りながら、
俺の身体を見ては、空を仰いでいた。
「死神さーーん!!!」
がみさーん………
さーん………
んー………
突然少女は大きく息を吸い、叫び出した。
死神さん、と。
俺はその訳の分からない言葉に疑問を抱きながら、
快復してきた身体を確認する。
これなら動かせる、と、
少女に対し言葉を放とうとした瞬間、
ざっ、と突然別の人間の気配がした。
「呼びましたか?」
「え!来るの?来ちゃっていいの?てか聞こえるの!?」
少女も突然のそいつの出現に驚いてはいたが、
まったくの他人という訳ではないらしく、
仲良さ気に話していた。
俺はその会話に、自分が何ともいえない憤りを感じているのが分かり、
少し心の中で、笑ってしまった。
俺が、誰とも分からない他人に対して……、
執着を感じているのだと気付いたからだ。
お互いが出会って、
・・・いや、お互いが存在を確認して、
まだ一刻も経っていないというのに……。
「死神さんっ、いいから早く!」
少女の叫びの声で、外界に意識を向ければ、
少々に急かされながら、先程の男がこちらに向かってくる。
「はいはい、わかりましたよ。どれ、よっこいしょっと。」
「………、もう私なににも突っ込まないからねっ」
奇妙な掛け声のあと、男は俺を抱き抱えて、
少々の後へ続き、
道なき道を目的地に向かって歩いていった。
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