1.
いつもの事だった。
じじいが遣わした世話役が、
俺に危害を加えてきたのだ。
いつもなら、一人でやってきた奴を、俺は逆に返り討ちにしていた。
だが今回のやつは、仲間を引き連れ、
大勢での抹殺を企てていた。
奴の作った食事には手を出さず、
俺は用心していた筈だったんだ。
だが、どこからと毒を盛られ、
俺は意識の薄れる中、襲い掛かってくる奴等に対抗していった。
無意識に逃げ惑い、余り来たことのない、町外れの森近くに来てしまっていた。
「………くそっ」
忍も幾らか混じっていたらしく、
じじいが俺に秘かに付けている護衛たちは、そちらの戦闘で手一杯の様だった。
「………こんな時に限って、白狐のやつっ、サボりやがって…!」
俺はいつもついてきていた一人の暗部を思い出しながら、
深傷を負った箇所を押さえて、走り続ける。
「ひゃははっ!!見つけたーっっ、九尾めっ」
追い掛けてきていた一人に姿を見られ、
俺は死力を尽くして応戦する。
「………っ、くぅっ!」
「諦めろっ、そして・・・・死ねーっっ」
奴の刀が、俺の肩を抉る。
死ね、と言いながら、急所を刺せないとは何と愚かな……、
俺は薄れいく意識の中で、
最後の蔑みの眼を奴に向け、
空に飛び上がっていた身体は、重力に従い墜ちていった。
――――今度こそ、死ねるかもしれない……。
そう思い、俺は舞い踊る風の音を聞きながら
意識を手放した。
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