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「#幼馴染」のBL小説を読む
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情緒不安定

 架け橋になってほしい、と言われたのだ。
 乱世と魔獣が共生していくための、架け橋にキミにはなってほしい。
 悩みに悩んで、私は頷いた。私でよければやるよ、と苦虫を飲み下しながらうけたまわった。
 どうして私なんだろう、と不思議だった。
 「誰でもよかったんだ」とジラーチは言った。ちょうどよく死んだ人間が私だったから、たまたま選ばれたのだ。
 なんだそれ、と憤った。怒ってわめいて落ち込んで、やつあたりだってした。
 でもポケモンが好きだから、最後にはそうしようと決意した。
 それしか私には、残っていなかった。










 腹は決まった。だが変わらず、お先は真っ暗。どうしたものかと頭を抱えている。
 ここら一帯はどうやら奥州らしい。そしてここは、青葉城の城下町。私の世界の日本でも広く知られていた、伊達政宗がおさめる土地だ。
 ここはゲームにあったような世界だから、その独眼竜はあれか……英語交じりのあいつか。レッツパーリィの人か。ちょっとテンション上がってきた。会おう、という気持ちにはならないけれども。だってお殿様なんだし。
 私は部屋を借りていた宿を出て一人で、町を散策している。引きこもっていてもどうにもならないので、気分転換にでもなればと思ったのだ。とはいえ、多少むりくりでもこれからの方針を定めたからには、近いうちに今の宿は発つつもりだ。
 しかし、心細い。ジラーチは宿に置いてきた。タマゴのことを任せたかったのと、いまだに心情が複雑なので、同じ空間にいたくなかったのが八割くらい。心を通わせているとは言い難いミロカロスの入ったボールと財布だけを手に、私は昼の城下を踏みしめている。
 二一世紀の日本よりも治安はよくないのだろうし、内臓がこわばっている。さすがにこんな商店街の真ん中でいきなりぐっさり、なんてことはならないとは思う。それでも、ワカシャモのことがあった。私はあれが、とても……うん、嫌だった。自分のことのように嫌で、悲しいし、苦しい。戦国乱世への忌避感が、すっかり胸の底に沈んでしまっている。
 俯いている。意識的に視線を持ち上げれば、見えてくるものは町並みだ。にぎやかで、明るい。歩いている人はみんな陽のあたる顔つきをしていて、その朗らかなさまが羨ましい。伊達政宗。きっと良い、国主なんだろう。
 おいしそうな団子屋を見つけたので、お邪魔することにした。私のぶんはここで食べるが、お土産用にいくつか包んでもらう。ミロカロスにも、帰ったらあげよう。こんなところでは、出すと騒ぎになってしまう。お金は持っている。旅費に困らないくらいには、与えられている。
 差し出された三色団子は、ほんのりと甘くて美味しい。もちもちだ。備えられたお茶との塩梅もちょうどいい。
 つかのまの味わいを終えて、一息。両手で大事に持っているモンスターボールを、祈るように、不安を拭うように撫でる。もう少し経ったら。帰ろう。

「Hey,店主! 団子と茶をひとつずつ」

 ふいに聞き覚えのある英語と低音が聴こえてきたわけですが飛び上らなかった私えらいと思う!! でもちょっと挙動が可笑しかったかもしれない! 思わずミロカロスのボールを握る手に力をこめると、嫌そうな振動が伝わってきた。ごめんね! でもHeyて! Heyて!
 ちら、と横を見る。うわぁああ! だっだだだっ伊達政宗が私の隣にウワァーッ相席だめです! 主人公!! アアッ相席だめでーす! 口には出せない! 落ち着け私平常心だ。うわっ心臓がやばい死にそう。死んだ。

「……Ah?」

 えっあっなっなんでこのっ殿様がこんなところにいるんだ。お忍び? お忍びなの? 散歩? 大丈夫? 右目に怒られたりしない?

「なぁ、そこのアンタ」

 だめだ、素数がなんなのかも分からない。退散しよう。伊達政宗と同じ空気を吸っている事実に耐えられない。おかしいでしょう私の推しは別にいるのになんでこんなに緊張してあれれ?

「おい」

 ぽん、と肩にさわられた。
 ぎょっとして振り向いた。目が合った。えっあっ何、も、もしかして私に話しかけて、た? えっ無理。眼光で殺される。
 私のコミュ障っぷりに何を思ったのかは分からないが、伊達政宗は特に気にしてはいなさそうだ。それどころかビビりまくっている私に「悪ィ」ときょとり断りを入れた。この瞬間私は全奥州の民を敵に回しました。殺せ! 誰か私を殺せー!!

「それ、なんだ」
「へぁ? も、モンスターボール……」
「monster ball? 外来のもんか!」

 しまった、つい答えてしまった。すいっと奥州筆頭の手がミロカロスのボールに伸ばされる。反射で私はすすいっとボールを遠ざけた。さわらないでほしい、という意思表示。直後に自分が何をしたのか自覚して吐きそうになった。オウエ。伸ばされた手が引っ込められる。ゲボェ。

「ご、ごめんなさい……」
「ああ、いい。大事なもんなんだろ」

 ふ、ふところが大きい……! 感激した。

「……アンタ、奥州のモンじゃあねぇな?」
「わ、分かりますか」
「おう。面構えが違う。……見ねぇ顔だ」

 あんまり見ないでほしい。穴が空く。

「Ah……何気負ってんのかは知らねぇが、奥州が悪い国じゃねぇってのは保障できる。ま、気楽にやるこったな」

 えっなにその……応援……してくださった……? 好きです……推します……ありがとうございます頑張る。やだ私……ちょろすぎ……?





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