不器用な愛し方しか知らない
※これの続き
「ラバスターーーーン」
背中に暖かいものを感じれば、そこには最近付き合うことができた愛しの彼女の姿がある。
にこにこしながら、少しほほを染める彼女は末っ子で甘やかされたことから、甘えてくることが多いと思う。
付き合うまでは知ることもなかった彼女の一面だ。
そんな、愛しいはずの彼女に対してなぜか素っ気なくなってしまう。
自分が不器用だと思いイライラしてしまうことが、最近多い。
女慣れしてないわけではないのにだ。
「どうした?」
「ラバスタンの姿が見えたから、抱きついちゃった」
えへへと笑いながらいる彼女は本当に可愛い。うれしいはずなのにも関わらず「用がないなら、はやく離れろ」と、突き放すような言葉しかでなこない。
これでは、泣き虫な彼女が泣いてしまうのが目に見えているのにだ。
「最近、冷たいね。ラバスタン、最初から私のことなんて好きじゃなかったんでしょ。ベラ姉様みたいにセクシーじゃないし、ドロメダ姉様みたいに聡明じゃないし、シシー姉様みたいに可愛くないそんな私のことなんか、好きじゃないんでしょ」
何を言われているのか、理解するまでに少し時間を要した。それくらいに、唐突な言葉だったために、頭がついていかなかった。
その言葉を否定しようとしても、頭が悪いからか言葉を選ぶことなど出来ずに、彼女を泣かせてしまう。
急いで、腕を掴もうとしても彼女はもういなかった。
ただ、泣かせてしまったことに後悔しかない。
***
あの日から、同じ寮にいるのに全くと言っていいほどに姿を見ることができない。
避けられているのはわかりきっているが、またいつもみたいに来てくれるんじゃないのかと期待する自分がいる。
愚かだとわかっていても、自分から行動することを躊躇われた。
「おい、ラバスタン」
「何ですか、ルシウスさん」
「ジェミニーとは最近どうだ。ナルシッサが心配している」
このこと以外に会話することなんか、ほとんどない人がでてくると厄介だ。
いや、その前にナルシッサが知っていることからすると、ジェミニーは本気で悩んでいるんだろうな。
これじゃあ、いつも通りなんてないな。
「普通ですよ」
何かを探るような視線に嫌気が差して、逃げようとするが「流石、ルシウス」とでも言いたいくらいに、「喧嘩でもしたのならはやく仲直りしろ」と、有難い忠告を頂いた。
何で、そんなこと言われなきゃいけないのか。と、思えば図書室でレギュラスと一緒にいたと、マルシベールが言っていたな。
同じブラックなだけに仲がいいだけだと、言い聞かせているが、誰からも人気のあるレギュラスに心奪われても仕方がないのかもしれないと、思ってしまう。
それほど、いまの俺はジェミニー不足に近い。
数日後、談話室でたまたまレギュラスと一緒にいるジェミニーを見つけた。
マルシベールが言っていときは、気づかなかったけれど、本人たちを見るとどうしようもなくイライラしてきた。
こんなことになるなら、もっとちゃんとスピカに接するべきだった。
不器用だったら、不器用なりの接し方があったはずだ。
それなのに、かっこいい俺をなんてくだらないことを考えていたから。
それでも、やっぱりスピカのことが好きだ。
「レギュラス、ジェミニーを借りていくぞ」
「ええ、どうぞ」
レギュラスに断りを入れ、ジェミニーをすぐに離す。
俺に腕を掴まれた瞬間に、見せた表情は少し悲しそうな顔をしながら驚いていた。
なんたって、こんなに可愛いんだ。
そのまま、談話室から出る。どこかに行くわけでもないが、とりあえずふたりきりになれる場所を探す。
「ラバスタン。痛いよ。それに、こんな時間に出歩いたら減点になるよ」
「いまは、それどころじゃない。なぜ、俺を避ける」
向き合ったジェミニーは少し動揺している。
誰のせいでこんなに俺がイライラしているのかわからないのか。
それでも、このギクシャクした関係を作り出したのは俺自身だ。
「俺は、お前だけいればいいんだ。ベラトリクス、アンドロメダ、ナルシッサでもないジェミニー。お前だけいればいいんだ」
そう言った瞬間に泣き出したジェミニーをそっと抱きしめた瞬間にスラグホーンに見つかり減点されたが、俺は満足だった。
腕の中で「私もラバスタンがいればいいよ」と言われたからだ。
それでも、理性との戦いはまだ続くと思った瞬間でもある。
20150825