大切だと思う度に君が遠ざかっていくのを僕は知っていたんだ
※これの続き
「あら、ウィーズリーじゃないの」
「ライリー先生、どうして」
目の前にいる死喰い人は、紛れもなくホグワーツ時代にお世話になったライリー先生だ。
僕をいつも呼び出しては、他愛もない会話にお茶会をしていたあの人が、いま僕の目の前に敵として現れた。
先生は、どうして僕にすべてを話してくれなかったんだ。
いつも僕のことを寮が違うのに贔屓のように呼び出してくれていた。
それが、僕の中でどんな想いになっていたのか、きっと先生はわかっていたはずなのに。
「やっぱり、あなたはそっち側を選ぶのね。光りある未来を」
「どうしてですか、ライリー先生。僕は、あなたとこんな形で再会はしたくなかったです」
「私は、あなたに会えて嬉しいわ。学生時代よりも一層、美しくなったわね。でも、まだ。あの頃のあの人には到底追いつかない」
「今でも、先生は探しているのですか?」
学生時代から先生の瞳に映る僕ではない何かを、まだ追い続けているのだろうか。
それでも、僕の前に立っている死喰い人であるライリー先生は、ホグワーツ時代の時よりも生き生きとしている。
「探している?私はあの人を探していたんじゃないの。現れてくれること待っていたのよ。だから、ウィーズリーあなたには満点をあげられない」
「今でも教師面ですか。あなたは、もうホグワーツにいない。闇の帝王が復活してから姿をくらませたくせに」
「それが、そんなにも気に食わないことなの?」
気に食わない。そう言われれば、そうだ。
僕は先生がホグワーツからいなくなったことを知ったときは、どうしてなのかわからなかった。
先生だけはずっと変わらないまま、その場にいてくれるという思い込みだったんだ。
「ねえ、ウィーズリー。あなたは私に何を求めているの?私は、ずっとあの人を待ち続けていたのよ」
「僕は…先生が幸せに暮らせる未来を」
「それは、単なるエゴにすぎないのよ。あなたの秤で私の幸せを図らないでちょうだい」
そうか、僕は先生の笑顔が見たかったんだ。
学生時代に見た先生の笑顔は悲しみを帯びたようなものばかりだった。
はじめて、気づいた。
僕はこんなにも、ライリー先生に溺れていたなんて。
救われることがあるのなら、最初からやり直したい。
「あなたは美しいままでいてね」
そう言いながら目の前から消える先生に奪われてしまった感情を、どう処理すればいいのだろう。
この戦いが終われば、先生は僕を見てくれるのだろうか。
最後に残された言葉の意味がわからないままでいる僕に正解を与えて欲しい。
20140801
Title:彼女の為に泣いた