想いの退化


先輩先輩と、まるで子供のように貴方を慕う俺は、いったい貴方の目にどんな風に映っていたのだろう。ただの部活の仲間とか、うちのエースとか。せめてかわいい後輩くらいには思っていてくれればと思う反面、そんなんじゃ足りないと思う。もっと。もっともっと奥の方。意識の細部にまで食い込むくらい、貴方の中に入ってしまいたい。決して忘れられないほど根深く、そして土に染み込む水のようにジワジワと、貴方の中に入り込めたら。


「……て、気持ち悪すぎっスね」


苦笑しながら目の前の恋人を見つめれば、彼は顔をしかめながら「キモいな」と同意した。いや、そこは恋人として否定して欲しかったっス。そう伝えながら帰宅途中に寄ったコンビニで買った肉まんにかぶりつけば、先輩は「てめぇの愛は重い」と溜め息を吐いた。


愛が重い。


その自覚はちゃんとある。きっと俺が笠松先輩にぶつけてきた愛情は、一般人のそれをはるかに凌駕するものだっただろうと。今までもそうだったわけじゃない。たぶん、中学の頃は回りと同じくらいの表現だった。いや、むしろ恋愛よりバスケやモデル業のが楽しくて、そちらに向ける想いの方が強かったはず。それが何故今になってこんなにも俺の愛は重いのか。その答えは明確だ。


「……笠松先輩が好きだから」


誰よりも何よりも、貴方が好きだから。そう伝えてから、やっぱり俺の愛は重いと呆れてしまった。分かっている。ちゃんと自覚はあるんだ。言った後でちょっとした後悔を味わうのもいつものこと。でもそんな俺をチラリと一瞬見やった先輩は、赤くなった顔をマフラーに埋めて、ドスッと俺の横っ腹をどついた。


「……分かってんだよ、んなこと」


貴方は俺の愛が重いと言う。それでも、貴方は俺の重い愛をその肩に背負うから。


「先輩、」


不器用で、照れ屋な先輩。


「笠松先輩」


負けず嫌いで努力家。いつだって自分にも他人にも厳しい笠松先輩。


「……幸男、さん」


どうしようもなく、愛しい人。


「大好きっス」


今にも泣き出しそうな声でそう告げだ。事実、顔はモデルとは思えないくらい崩れていたことだろう。泣きながらの告白だなんて情けないけど、これが俺の想いだから。くしゃりとした顔をしながら笠松先輩を見ると、先輩は少し驚いたような顔をした後、仕方ないといった風体で俺の頭を軽く叩いて頬を撫でる。


「分かってるっつってんだろ、バーカ」


困ったように漏らされたその笑みさえも、愛しくてどうにかなりそうだった。











想いの退化を僕らは知らない
(好きだから、好き)











2013.02.28

初の黄笠がなんか重い!
愛が重い黄瀬くんおいしい。そんな黄瀬くんを背負う笠松さんマジ男前っス尊敬します(`・ω・´)キリッ

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