Shin's Birthday 01

11月1日。
いつものように物資の補充のために港に寄る直前、船長に呼び出された。

「おい、シン。お前の好きな酒買ってこい」
適当な金貨を渡され、トワと共に買い出しに出かける。
間近に迫った俺の誕生日のための買い出しだ。
それは俺が船に乗ってからほぼ当たり前のように繰り返されてきたことで、決して真新しいことではない。

シリウスでは、宴と呼べるイベントはことあるごとに祝われてきた。
俺は母が亡くなってから、自分の誕生日を祝うなど思ってもみなかった。
だがこの日一日だけは、シリウスの宴で自分の好む酒を思う存分嗜めるとあって、少なからずも俺は気に入っていた。


今年もいつもと同じように買い出しに出かける。
唯一違うことと言えば、○○が俺の部屋を共有するようになったくらいだ。
いくら俺がアイツを破落戸から助けたことを覚えていたとはいえ、まさかあれだけ脅した俺の部屋を選ぶとは思わなかったが。

色気のカケラもないただのガキだと思っていたが、仕事ぶりは悪くない。
父親の地位とこの容姿だけに寄ってきたモルドーの女どもや、金と海賊王の仲間という肩書きに目を輝かせる娼婦らと違って、俺に媚を売らない○○の存在は決して嫌なものではなかった。

「シンさん、あの酒屋さんでいいですか?」
気づくとトワが通りの向こう側にある酒屋を指して俺の顔色を伺っている。
あの酒屋はいつも買い出しで行く店だが、俺の目当ての酒は置いていない。
「いや、もう1ブロック先にある酒屋まで行く。向こうのが品揃えが豊富だ」
そう言ってまた歩き始める。

この地方には近年になって名が知られ始めたブランデーがある。
元々アルマニャックは好んで嗜んでいたが、このコニャックというのがなかなか理性的な味で魅力的だ。
まだ限られた酒屋でしか売られていないが、この先の酒屋にはこの前も置いていた。

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