されどされど今一度



「ねえ、あなた、カクさんの何なわけ?」

メイクばっちり、髪型オーケー、ネイルや洋服もバッチグなお姉さんが私の前に立ちはだかる。おお怖い。しかしお姉さんが本当に欲しい答えを私は持っていない。

「…ただの同居人ですが」

ああ、ほらやっぱり。お姉さんは徐々に般若のような顔へと変わってゆく。「恋人です」という返事を予想していたのだろう。おあいにく様、そのような綺麗な関係ではないのだ。
お姉さんはほとほと呆れたように、大きいため息と綺麗なヒールの音を残して去ってしまった。

@

「…なんてことが昼間あったんですよ」
「はー、今どきまだそんなこと言うやつがおるのか。女は怖いのう」
「ほんとですねぇ」

カクさんがいつにも増して泥だらけで帰ってきたのは夜の10時頃で、手にはいくつか絆創膏が巻いてあった。
カクさんのご飯を素早く用意して、服を洗剤につけて、もみ洗いする。取れなくなったら困るもんね。「なまえー!今日のご飯もうまいぞー!」なんて声が届く。
思わず吹き出してしまう。「はいはい、ありがとうございますー」

こんな夫婦のようなやりとりは今日に限った訳ではなく、いつから続いているのかさえ覚えていない。私にとって彼は何なのか、彼にとって私は何なのか。そんなことを聞くのは今更すぎるのだと思う。
それでも彼が嫌いではないし、しかし好意があるわけでもない。かと言っても、友人という言葉で片付けられない。私は二進も三進も行かない現状に満足しているのだけれど。

私、サバサバしすぎなのかしら。
そんなことを考えているうちに、カクさんの服はいつの間にかキレイになっていた。







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