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「おはようございます!」

「はい、おはようございます。」

彼女がにこりと微笑めば瞬間に周りが色づく。青年は頬を赤らめて、慌てて目線を自身の肩にかける鞄の金具へ逸らした。

何か、何か話をしなければ…!

話しかける勇気を出すだけでも精一杯だった青年は、それより先のことを考えていなかった。


「あ、えと…あの、あ、そうだ、本!本を探していて…。」

「はい、どのような本をお探しですか?お手伝いいたしますよ。」


かたりと音を鳴らして椅子から立ち上がった彼女は、それだけの動作で甘い香りが広がったような気がした。

めいっぱい空気を吸って、吐き出す。


目の前で不思議そうに首を傾げる彼女。

今日こそ、彼女とお知り合いになるんだ!

さあ、頑張れ自分!!




「…どうされましたか?」

と、そこへ突如この二人の空間に男性の声がかかった。


だ、誰だ…?

見れば、他の職員とは少しデザインの違う制服を着たガッチリとした黒髪の男だった。


「堂上さん!」

どこか嬉しそうな彼女はとってもいい笑顔を浮かべている。


あ、あれ…。
なんか、心なしかこの男の人、ちょっと怖い顔してない?

「本をお探しのようでしたので、お手伝いをと思いまして!」

「…なるほど。では、私がご案内します。」

言葉は丁寧だけれど、どこか鋭い目でこちらを見ていてこれが全て彼女に近づくための作戦なのだと見透かされているように思える。

「あ、いやでも…。」

「こちらの者はカウンター業務もありますので、私がご案内します。」

「あ、それがいいですよ!堂上さんならすぐお目当ての本、見つけてくださいます!大丈夫ですよ!」

ああ、な、なるほど…。

俺は悟ってしまったよ…。





失恋、確定だ。





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