春眠 | ナノ
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と、いってもこちらにはガウェインと、アーチャー。そして今回はお留守番枠のギルガメッシュしかいないのだ。
おまけに、白乃のアーチャーの投影は彼女の剣とは抜群に相性が悪いときた。
これで、あのアーチャーまで相手にしろと言うのだから、モード・ルナティックにもほどがあるだろう。いや、本当に。


にしても、前世が英霊とか――――滾るな。
この俺の前世にもリンカーンとかいないのだろうか。
こう、横暴からの自由を求める感じで

と内心嘯きながら、真横にいるであろう金ぴかにばれないよう、横目で透かし見るように覗き見てみる。

「いえ、我らは英霊に召し上げられた時点で、輪廻の輪より引きはがされます。なので、前世、というのはありえるはずがないのですが……」
「いいや、あの女だけは特別よ」

瞬間、視界が金に染まり、ギルガメッシュが現界した。
このパターン多いね。本当に暇なんだ。

「当たり前だ!いつまでこんなことに手こずっているのだ。他でもないこの我が飽きたと言っているのだ!速やかに、迅速に、一瞬で迷宮を踏破せよ!」

んな無茶な!
だいたい、攻略方法が読めていないんだって。
俺に死ねと言っているのかこの王は!?

「特別って……どういうこと?」

そんな命の危機に瀕しかけている俺に無情にも目もくれずに、白乃が素朴な疑問を投げかける。


「あれも言っていただろう。然るべき契約を果たさねば、輪廻からの解脱が出来ん。そういった誓約をはじまりのころに旧き神霊と結んだのだからな」

……なるほど、よくわからない。
だが、ギルガメッシュが言うなら、そういうことなのだろう。
この英霊が偽りを述べることはないのだから。
だが、……はて?なぜ、ギルガメッシュがそのようなことを知っているのだろうか。
意味が分かりません。説明を求める、と首を傾げて、目で回答を促す。

「知れたこと。あれはその昔、我の臣下であったこともあったからな」

そうか前世か―――――まて?まてまて。どういうことだ。
前世があることは想定の範囲内だ。
この星に存在する命あるものにはどれにでも存在するし、なんといっても、先ほどまで彼女のそれについて話していたのだから。……だが、臣下?これの?うっかり見ただけで首を狩ろうとする、この横暴極まりない王様の!?

………なんと憐れな。全力で同情しよう。
いや、本当に。
そんな、胸の底からこみ上げる同情と葛藤を押し込めて、ギルガメッシュを見ると、その視線気気付いたゴージャスは全てを理解した王の眼差しで、鷹揚かつゴージャスに頷いた。

「ははは、そのように物欲しげに見るでない。あれはそれなりに見どころのある奴だったのでな。今の貴様では太刀打ちできまいよ。だが、貴様も道化としては悪くはない。将来性に用相談と言うやつだな。うむ、そうだな。まずは我の下働きから初めるがいい」

違うし!
いや、本気で臣下とかごめんです。
物欲しげではなくて、彼女に対する憐れみの目です
そこまでドMじゃないんで、俺。――――とか言ったら、命が危ぶまれるので、当たり障りのないことを語っておく。
あ、俺。相手は女の子がいいです、はい。

「む、その意見には同意だな。むくつけの筋肉ダルマよりは、目の慰みにもなる見目の方がより良いことには変わりない。しかしああいった、乳袋はいただけんがな」

いや、そこには断固として反対させて頂こう!
あれはいいもの、人類の至宝だ。
俺は男として、死んだとしても譲れない信念がある。
それが、たとえ――――人類最古の英雄王であろうとも!!

「む、なんという、瞳の強さ。王に対して、一歩も引かぬとは……この打たれ強さこそが雑種の強みだとでも言うのか!!くっ、この我に対してその妄言、本当であれば地に頭をこすり付けて死してもなお許しがたいが…王を前にして頭を垂れぬその心意気。その信念に免じて許そう――――大義である。その道、貫くがいい」

お、王よ!

「はいそこ、無駄口を叩かない!そんなところに価値を見出すのは間違っているわ。ええ、断固としてね!」

ギルガメッシュと二人して、遠坂の胸元に視線がすっと引き寄せられる。
きゅっと、形よく引き締まった肢体。なだらかにして、桜に比べれば慎ましやかなその曲線。セーラー服の襟ぐりから垣間見える、そのわずかな影――――――グッド。
これはこれで、いいではありませんか?

「うむ。だがまあ、我はもう少し慎ましやかでも―――――」
「あら?迷宮のど真ん中で生命維持システムを切られる気分、味わってみたい、岸波君?」

謹んで遠慮いたします。
この通り、すいませんでした。

猫のように吊り上った瞳から放たれる、鋭く刺し貫くような眼光に、胃がきゅっとなる。
かくして、俺はひれ伏さざるを得ないのであった。


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