春眠 | ナノ
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「っと、それなら他には、クラウダス王―――クローヴィスっていうと……何があったかしら?んー、えっと、これかな?竜退治をして国にキリスト教を広めたことと……あと、弓の、腕とか?……なんか聞いたことあるような話ばっかね。どこかの民話とか逸話とかが途中から混じってるんじゃないの、これ?」
「かもしれませんね。とはいえ逸話が昇華して宝具になるのが英霊です。そちらも念頭に置いておいた方がいいかもしれませんね」

そんな凛とラニの考察を遮るように、ガウェインは、重く低い声色で言った。

「いいえ、そういった類ものではありません。彼の王の宝具は、その伝承。いかなる敵であろうとも、王の剣を抜き払えば、3つ剣を交えるうちに必ず打倒したという逸話の具現こそが、真の宝具です」
「……なるほど。おそらく、この霊子虚構世界では、3ターンの間に倒さねば、敗北が決定する。と言ったところでしょうか。その敗北が、即死か、強いダメージかはわかりませんが……なかなかに厄介ですね」

3ターン。
必ず打倒すというには、容易い――――とは決して言えない時間だ。
何より彼女は3ターン食い止めれば、勝利が確定するのだ。
それが今の俺たちにとって、どれほど困難な事か、語るまでもない。



その事実に、深い沈黙が部屋を覆う。

「それと、彼女ともう一度対戦するのならば、もう一つ問題が生まれます」

そんな、重く冷えた部屋に、柔らかな桜の声が響く。
だが、その声が告げる真実は、やはり重苦しいモノだった。

「あの剣には、霊子構成を著しく乱される作用があります。その分析の結果にわかったことなんですが…宝具としてが発動されたが最後、発動に霊子を用いる宝具は勿論のこと、魔術やコード、スキルの場合はランダムではありますが、高確率で使用不可能となる効果があると思われます」


かつて地上にマナが満ちていたころ、
どのような魔術であれ、あるいは宝具であれ、その魔力を対価(燃料)に奇跡を為したのだという。それが大気に満ちたマナであるか、個人のオドであるかは別としてだが。

彼女はこう語った。
これはかつて、あらゆる魔力を食んだ、隕鉄の魔剣。
魔術とはそれ即ち、逆行と歪曲。
そのあらゆる不条理を、正常に戻す概念。
過去への逆行ではなく、未来への躍進を理念とした、星の剣。

その威容は、この月にても健在。
常時発動形の宝具以外であれば、あらゆる歪みも奇跡も等しく打ち消す魔剣である。

いや、その権限はこの月においてこそ、増しているといえる。
かつての地上では本人に向けられた魔術や、あるいは大気の魔力を多少なりとも用いる奇跡のみ、発動を阻止するものだけだったそれ。だが、ここ霊子虚構世界においては、あの魔剣は個人の霊子すらも揺るがすことのできるのだ。すなわち、個人の魔力を用いるコードですら、通用しない可能性があるのだ。


「……つまり、宝具は勿論、できればスキルも使わずに、3ターン以内に文字通り己の実力のみで倒さなければならないってことか―――、一つ一つは対した脅威じゃないのに、使い方でこんなにも厄介になるのね……」
「なっ、それってかなりこちらに分が悪いじゃない!」

横を見ると、白乃が目をリスのように見開いて、驚きを口にした。
そんな慌てる兄弟の肩に手を当てて、宥める。

落ち着け白乃
こんな時こそクールになるんだ。
ああ、確かに厄介な宝具だ。
だが恐れる必要はない。俺たちにはまったく問題がないぞ、白乃。
だって――――――――俺たち、宝具が使えないじゃないか。

はっとしたように、白乃は息をのみ、開眼したように目を見開いた。
ああ、ようやく理解したか、シスター?


「じゃないっての!ボケないそこ!!」

凛の怒りのボルテージが上がった。戦闘力、100アップ。
白野の脳天に鋭い突っ込みが、吸い込まれる。会心の一撃!
えぐり込むように正確無比な一撃が白野を襲った!
衝撃が走り抜ける。痛い!そして鋭い!
星が見えたスター!
白野に500のダメージ。
白野は倒れた。

「は、白野ぉぉぉ!」

泣かないでくれ白乃。俺、頑張ったよね……?


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