疾速ルシフェル
異なる神が争いをうむ
「石田っ…!アンタが俺らに大砲ぶっ放したのかっ!!」
「む……長曾我部と毛利か。何故貴様らがここにいる?」
「やだなー野暮っすよ三成様!そんなの入信に決まってるっしょ、にゅーしんっ」
「……入信か」
「違うっ!!ちょっとした理由があって世話になってただけだっ!!」
「貴様らのせいでまた長居をすることになりそうだがな」
苛立つ毛利の目よりもさらに鋭く、俺たちを睨む男はあの石田三成
その隣の軽そうな兄ちゃんは、最近名前を聞くようになった島左近だろう。共に豊臣の家臣、そいつらが攻めてきた
「貴様らの事情など知らん。私はそこの男の首を狩りにきただけだ」
「ぼ、僕が何をしたというのですっ!!豊臣には毎年、贈り物だってしていますよ!」
「それが問題だっ!!秀吉様にあのようなふざけた物を送るなど万死に値するっ!!」
「おいおい、どんな贈り物かは知らねーが。ガキの寄越した物でそんなにキレることはねぇだろ?」
「いやそれがここだけの話。髪の伸びるザビー人形、てやつでさぁ…捨てても捨てても秀吉様の枕元に帰ってくんだよ…あ゛ー怖っ!!」
「……なるほどな」
大げさに身震いする派手な兄ちゃん。だが確かにそれは、豊臣の左腕が出る程の大問題だろう
それでも、だ。それこそ俺らが知ったことじゃねぇ。アンタたちのせいでせっかくの船が台無しだっ!!
「落とし前はきっちりつけさせてもらうぜ…ジュリア、危ないからアンタは下がってな」
『ああ、なんと頼もしいのでしょうキャプテン…!アナタに主のご加護がありますように…』
「お、おう!俺の活躍、しっかり目に焼き付けとけよっ!!」
「長曾我部…やはり貴様も信者か、邪魔をするならば斬るっ!!」
「っ、大変です三成様っ!!あれ見てくださいあれっ!!」
「何事だっ!!?」
「あそこにいる女の子、めちゃくちゃ可愛いっすっ!!」
「しねっ!!!」
「いってぇっ!!?」
刀にかけられていた石田の手が拳をつくり、隣の部下の頭をぶん殴る
さっきまでそいつが指さしてたのは俺の隣にいるジュリア。どうだ可愛いだろ…と自慢気に胸をはると背後の毛利から冷たい視線が送られてきた
「いやいやよく見て三成様っ!!あ、いや、よく見なくても分かりますってば!めっちゃ可愛いっ!!やべ、すっげー仲良くなりたいっ!!」
「なっ…!テメェ!ジュリアに下心剥き出しな顔を向けんじゃねぇっ!!」
「貴様が言うか」
「う、うるせぇっ!!!」
「え、もしかして鬼のお兄さんの女?まじかー、そりゃ手出せねぇか…」
「なっ、か、勘違いすんな!別にジュリアは俺の女じゃ…」
「やりーっ!!じゃあじゃあ誘っても文句ないっしょ?そこのお姉さーん!俺のカッコイイとこ見といてくれよなーっ!!」
「あ゛ぁあ…!」
「…貴様も面倒な男よ」
石田にぶん殴られても何のその、ジュリアに向かって大きく手を振る左近
ジュリアもジュリアで律儀に振り返すし、いや、俺にそれを止める権利はねぇんだが…!
「い、今のうちに逃げますよ宗茂っ!!僕の背後は任せましたっ!!」
「御意っ!!!」
「逃がすかっ!!!」
「ぎゃあっ!!?」
「大友っ!!?」
この騒ぎに乗じ逃げようとする大友の前に、あっという間に回り込んだ石田!
その速さは流石だ。あの立花さえも追いつけず、大友の悲鳴が響いた時には鞘から刀が抜かれた後
「懺悔の間もなく散れっ!!」
『宗麟様っ!!!』
「っ、待て石田−…!」
「そこまでだっ!!!!」
「っ………!」
「あ……!」
首が斬られる、その刹那。響いた声に石田の手がぴたりと止まる
その代わり、振り向いた奴の顔はさっき以上に般若のよう。ギロリと睨む先に仁王立つ男はそうだこいつらと知り合いだったな
「ガキを虐めるなんざ落ちたもんだな三成っ!!」
「官兵衛、貴様もここにいたか…!」
「お、官兵衛さん久しぶり!けどちょーっと空気読めてないっすね」
「うるせぇ、黙ってろ左近っ!!刑部は来てないみたいだな…」
『ジョシー!ピンチに駆けつける様のなんと頼もしいことでしょうっ!!』
「お、おう!小生に惚れ直したかジュリアっ!!」
「…ここにも馬鹿がいたか」
「俺と見比べんじゃねぇ…!」
だが命拾いしたのは確かだ。見ろ、石田の標的が黒田に変わってる
今のうちにさっさと逃げてく大友と立花…だが逃げるならちゃんとジュリアも連れて行けよ馬鹿やろう
「おいジュリア、アンタも逃げ−…」
「ほらこっちこっち!キレた三成様は危ないから、俺の後ろに隠れといてくれよなっ」
『まあ!なんてお優しい方っ』
「島ぁあぁあっ!!!そりゃ俺の役目だっ!!」
「…やはり面倒な男よ」
20151221.
続いてしまう
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