ワッフル
『えっと……あ、あった!家康くん、あったよっ』
「お、おい結!そんな狭い所で急に―…!」
ゴツンッ!!!
『きゃあっ!!!?』
「結っ!!!!?」
彼女の悲鳴よりも大きな声で名を叫び、ワシは慌てて彼女へ駆け寄った
今日、結と共にやって来たのは彼女に会うために通い続けた神社
あの日、彼方と此方を繋いだ風。その風に運ばれワシたちは未来へやって来た。ここは全ての始まりと繋がりの場所だ
…そして結は今、その社の隅で頭を押さえ、小さく丸まって痛みに震えている
「だから言っただろう…床下に潜って急に立ち上がっては、頭を打つに決まっている」
『ご、ごめん…つい…』
「あ…いや、いいさ、謝らないでくれ!ははっ、痛かったな」
『うぅ…!あの、それより、あったよ…』
「どれどれ…ああ、本当だ!」
『……ふふっ』
涙目で地面を指差す結の隣に座り込み、指の先をたどっていけば…ああ、確かに
そこには小さな花が数輪、控えめに咲いている
まだ結がワシにしか、ワシが結にしか見えていない頃。社をグルリと見て回った時に見つけた花だ。前はまだまだ青い蕾だったのに…
『ここでは見ない花だね…どこかから、風で運ばれてきたのかな』
「そうかもしれないな…こんな隠れた場所、日の当たらない影でよく育った」
『そうだね…』
「…………」
チラリと窺った結の横顔。真っ直ぐに花を見つめる彼女は何を考えているのだろう
冷たく寂しい場所で咲く花を哀れんでいるのだろうか。直ぐに枯れてしまうであろう花たちを嘆いているのか
それとも…
『一人ぼっちだったら…咲けてなかったよね』
「……え?」
『あは、そう思えたの。こんな場所を選んだのも、他の子たちも一緒だったからかな、て』
「…………」
『…家康くん?』
「え、あ、いや、な、何でもない!何も…!」
『あ、危ない家康く―…!』
ゴツンッ!!!!
「ぐっ!!!?」
『家康くんっ!!!?』
……瞬間、ワシは社に思いきり頭をぶつけてしまった
頭を抱え痛みに耐えるワシにアワアワと慌てる結。しかしハッと気づき、打った後頭部に触れ、そして、へにゃりと笑う
『…急に立ち上がっちゃ、危ないよ家康くん』
「す…すまん…」
『ふ、ふふっ…たんこぶにはなってないみたい、よかったね』
「ああ…は、ははっ…恥ずかしいな、意外と」
『でしょ?でも私たちだけしかいないから、平気だよ』
「っ……そ、そうだな!今、ここには…ワシと結だけだ」
『うんっ』
「…………」
もう少しだけ、ここで…そう願うがそれは許されない
低い姿勢のまま、結と共に床下から抜け出す。そうすればそこは日が差す明るい場所。今日もやはり風もなく静かな神社だが
「…そろそろ帰ろうか、結。店まで送ろう」
『うんっ』
「あ……できれば、その…」
『また来ようね、家康くんっ』
「っ…は、はは…ワシが先に言おうとしてたのに、酷いぞ結っ」
『あははっ、ごめんね』
「はははっ」
その願いはあと一歩、彼女へ近づけたらにしよう
20140915.
関ヶ原2014・権現
タイトルがワッフルなのはアレです権現の腹筋((
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