弟と思春期と文系
久々に実の姉を訪ねると、そこには義兄と愛人と従兄弟とたくさんの甥っ子がいました
「…あ、おはよう」
「……おはよう」
「あー、佐助くんだっけ?朝食って君が作ってるの?」
「…ナキさんと、片倉の旦那と当番制。早く顔洗ってくれば?」
「はーい」
姉の家で迎えた朝。トントンという軽快な包丁の音で目が覚める
あのナキちゃんも新妻っぽいことするんだなーって台所を見ると、そこには姉じゃなく昨日初対面した従兄弟がいた
名前は佐助くん。中学生ぐらいの彼は、昨日からずっと僕を警戒してる。ナキちゃんから変な紹介されたのかな
「うわ、スッゴい量。そりゃ大家族だもんねー玉子焼美味しそう」
「………………」
「佐助くんってどこの中学?ここから通ってる?あ、方向一緒なら僕と一緒に…」
「あーもううるさいなっ!!邪魔するなら席に座って大人しくしててよ!」
「ご、ごごごめんっ!!」
…怒られてしまった
あの年頃の男の子は思春期だからね、仕方ないのかもしれないけど…あ、僕も同じか
仕方ない、朝ご飯の時に話は聞こう。そう思ってテーブルに向かうと…
「………おはよう」
「うむ、」
真剣に新聞を読む、松寿くんが先にいた
彼も見た目は中学生。すごい華奢で美人な子だけど性格はきつそう。ただ佐助くんと違い、僕のことはウェルカムな感じで迎えてくれていた
「当然よ。義弟との円滑な関係も一族繁栄の基本ゆえ」
「え、義弟?従兄弟じゃなく?」
「あ゛ーもう!松寿も話をややこしくするなって!ほら、新聞片付けて!」
「わっ」
「ふんっ…」
いつの間にか台所からこっちに来ていた佐助くんが、テキパキとテーブルの上を片付け始める
それに渋々新聞を畳む松寿くん…なんかこっちの方が夫婦みたい
「…僕よりしっかりしてるね佐助くん。ナキちゃんも良い主夫見つけたよ」
「しゅ、主夫って言うな!ナキさんに任せたら大変なことになるから俺がやってるだけであって、別にこれは…!」
「あ、佐助くんてツンデレなんだ」
「つんでれ言うなっ!!」
「片倉や大谷に負けぬよう必死なだけよ。すぐ顔に出るゆえ」
「あんたが言うな松寿…!」
「……あはー、」
…なるほどなるほど、この二人は従姉妹のお姉さんに憧れてるわけか
僕も男の子だから分かるよ。年上のお姉さんっていいよね!ナキちゃんは無理だけど!そういう目で見れないどころか逆らえないけど!
「で?どうなの、思春期に大人のお姉さんとの同居って」
「なっ−…べ、別に…母親ってたいへんだなーってくらいだよ」
「あれ、もう女から母親になってる感じ?子沢山だけど若いからまだまだいけるんじゃない?」
「…あんた、実の姉のそんな話、よくできるね」
「僕、楽しいなら何でも良いから。松寿くんは?」
「ふむ…ちび共が多いとはいえ奴らを出し抜き、ナキと二人きりとなった時は痛快よな」
「あ、僕の求めてた答えと違う」
「どんな答え求めてたんだよ…」
「もっとしょっぱいやつ!性に目覚める年頃でしょ?他にない?ナキちゃん、あれで他のお姉さんより胸大きいし」
「は、はぁあっ!!?な、なな何言ってんだよっ!!べ、べつに胸とかっ…!」
「胸の大きさなど関係ない。ナキが我を見るかどうかが重要ゆえ」
…あ、松寿くんはちょっとこじらせてるのかもしれない
対する佐助くんは真っ赤になって慌てふためいてて…なるほどなるほど、ナキちゃんをそういう風に見てるのはこっちか
「ねぇねぇ佐助くんって家事の手伝いしてるんだよね?ナキちゃんの下着も洗う?お風呂鉢合わせたりする?」
「だぁあぁあ゛っ!!!無いっ!!無いからっ!!」
「無いってこと無いでしょ。弟の僕が体験したことは従兄弟の君もしてるんじゃない?ほらほら言っちゃいなよ」
「な、なっ…!」
「思春期の男なら悩みも多いよね。僕で良かったら話を−…」
『ほう、朝から愉しいお話をしてるようだね愚弟』
「………あ゛」
・・・・・・・。
『…佐助くん、台所でお味噌汁がグツグツ煮立ってるよ』
「え、あ、う、うんっ!!」
『松寿くん、悪いけどちびっこたちを起こしてくれるかな』
「任せよ」
『………さて、』
「…………あはー、」
『あはー、』
姉という生き物は、怒らせないにこしたことはない
20160505.