対愛


『さてと。おいでヨツバちゃん、クロバくん…って何見てるの?』

『父上に矢を折ってもらいます』

『おぉふ、嫌な予感』




さあお風呂の時間だよと可愛い娘と息子を呼びに行くと、元就くんのもとに集まり何かを覗き込んでいた

それは帰り道、クロバくんが拾ってきたいい感じの棒…が三本。ああ、やっぱり嫌な予感しかしない




『父上、』

「見ておれ。所詮、一本であろうと三本であろうと軟弱な棒きれであればこの通りよ」



ボキッ



『『おお…!』』

『ちょ、アイデンティティを持ちネタにするなよ元就くん。確かに皆、一度は思うけど。三本でも折れるんじゃねって思うけど』

「うむ。たかが三本では何もできぬ、高みを目指すにはより多くの駒が必要よ。そなたらはその駒でありながら、他の駒を動かす存在となれ」

『はい、父上っ』

『がんばります』

『なんだかんだ上手くまとめたね…あは、でもほらこの一本』

「む…」




クロバくんが持ってた長めの枝を一本もらい、それを三人にかかげて見せた

ここに一本があります





『私と元就くんが出会って家族になって…二本になりました』




ペキッ




『…簡単に折れてしまいました』

『でしょでしょ。でもヨツバちゃんとクロバくんが生まれて、家族が四人になりました。もう一回折っちゃいます』




ペキッ




『…四本』

『これで二人に弟か妹ができたり、誰かと結婚したり、また子供ができたりしたらもっともっと増えるんだよ』

『それが何本になれば折れぬ矢となる?』

『そうだなぁ…いっぱいいっぱいかかると思うけど、私や元就くんにも兄弟がいて、お父さんお母さんやお祖父ちゃんお祖母ちゃんがいるから』




もうとっくに折れない束になってるかもね

そう言うと二人はじっと枝を見つめる。元就くんも。そうやってずっと紡がれてきたのが家族なんだよ




『…ではきっと、ボクたちの束は折れませんね』

「ほう、クロバ。その理由は何だ?」

『ボクたちの束にはトラもいます。蘭丸おにいさんや市おねえさん…織田のおじさんたちも。ですよね、ヨツバ』

『うむ!その一本一本も強いゆえ、この細枝のようにはならぬかと』

「………………」

『…ぶふっ、そっかそっか。織田貿易で何か吹き込まれたみたいだね』

「ナキ、何故笑う」

『ごめんごめん、別におかしいわけじゃないよ。けどさ、知らず知らずのうちにまた家族が増えてる』

「……………」

『愛情の葉だけで、四枚のクローバー揃っちゃった』

「…そうだな。よかろう、ヨツバ、クロバ、そなたらにクローバーの話をしてやろう」

『クローバー?』

『何でしょう父上、』

『…あはー、』




バキバキに折れた枝を捨て置いて、元就くんは二人を手招き再び側に呼ぶ

…お風呂はもう少し後かな。明日はゆっくり過ごせるから夜更かしもいいかもしれない








『…いつかは私たちの昔話をしないとね。ヨツバちゃんとクロバくんは信じてくれるかな』

「信じずともよい。我らがそこにいたことに、揺るぎはないのだ」

『そうだね…あ、忘れてた。元就くん、これ今日遊びに行ったお土産だってさ』

「…ヨツバとクロバからか?」

『蘭丸くんから……あっ』

「……ほう、詳しく聞こう」

『……あっはー』






20150614.
対愛√。紡がれていく過去と未来


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