You Copy?



『なに、このDVD』

「ホラーだよ、ホラー映画!雪子って好きだろ?」



今日最後の講義も終わり夕飯のおかずを買って帰ろうと立ち上がれば、待っていたのか前田が乗り込んできた

渡されたのはDVD。ホラー映画だって



『…中身はエッチなお姉さんとか、そういうオチ?』

「そんなんじゃないって!ちゃんとした日本のホラー映画だよっ」

『ふぅん…で、これを見たらいいの?』

「雪子、ホラー好きって言ってたじゃん。絶対に面白いからさ!」

『ホラー…』

「あ、独りで見るのが怖いなら、俺が泊まりに…」

『じゃあ二、三日借りるねー』

「あ、ちょ、雪子っ!!!」



呼び掛けてくる前田はスルーして、私は帰り道を急いだ

でもそう言えば…みんな、ホラー映画は初体験だよね。いきなり日本ホラーはハードル高いかもしれないけど



『今晩、見てみようか…ふふっ、みんなのお風呂が終わってからだけどね』







「…今宵は何を見るつもりだ?」

『元就さん…今度のDVDはホラーですよ』

「………?」

「ほらぁ?どういう意味だ?」



元就さんに引き続き元親もテレビの前にやって来た。真田くんや佐助さん、他のみんなも集まり始める

ちなみに台所では、奥州主従がおつまみを作っていた



「怪談話か…小さい頃はよく聞いてたがな」

『私も。昔は兄さんに引っ付いて見てたなぁ…』

「なんだ、怖いのか?」

『ううん、平気。怖がったら兄さんが隣に居てくれてたから、怖いフリよフリ』

「へ、へぇ…」



そうこうしているうちに、政宗さんたちが皿を持って居間に戻ってきた。ベーコン巻きと買ってきたいかの塩辛…飲む気満々だな、お二人さん



『お酒は止めといた方がいいけどね…トイレ行けなくなっても知らないよ』

「雪子様、厠へ行けないわけでも?」

『あー…三成は大丈夫な気がする、忍組も』

「…………?」

『小太郎くん、見れば分かるよ。じゃあそろそろ始めようか』









“きゃぁぁぁっ!!!”

「「「「・・・・・」」」」

『…………』



主人公の女性が気配に振り返り、誰も居ないことを確認した。そして安心して正面を向いたら…という日本ホラーの常套手段

前髪を垂らし目力半端ない女の子が画面一杯に広がった


彼らの反応は様々。真田くんは自分の背後を振り返り、恐る恐る画面に視線を戻す

政宗さんはチラチラ時計を気にしているが、悲鳴があがるたび肩が跳ねるのを私は見逃さないよ



『…元親、なに画面を睨んでるの?』

「いや…今の女が飛んでった仕組みを探してた」

『うわぁ…元親って嫌な客になるね』



一方で、元親は映画の演出の仕組みを考えてるし、大谷さんはいつも通り綺麗な背筋で鑑賞中

小太郎くんも微動だにせず、佐助さんは真田くんが驚くたびにそれを宥めていた

…三成に至っては眠そうだ。女の人が叫んでも子供が泣いても無関心



『…戦国武将、反応がいまいちなんですけど』

「なに期待してたんだ?」

『もっと驚いたり怖がったり…真田くんや政宗さんみたいな反応が欲しかった』



片倉さんとか他のおつまみ作りに行っちゃったじゃないですか。美味しいけど、片倉さんが立ったら政宗さんが気配にビビってましたよ

今と違って昔は明かりが少なかった…暗闇くらいじゃ驚かないのか。次はゾンビ映画に挑戦しよう



『……って、あれ?元就さんは…ああ』

「毛利ならいつもの場所にいるだろ」



テレビの周りにいない彼を探せば、いつもの座椅子に座っていた。人の輪に入りたがらない元就さんの特等席だ…け、ど…



…………いつもよりこちらに近くないですか?



『元就さーん、もしかしてテレビの音が小さいですか?大きくします?』

「余計な事をするでない」

『…そう、ですか。あ…ここからだといい感じに画面が見えますね』

「我の背後に立つな!」

『えぇー…』



どこぞのスナイパーのようなことを言う元就さん

座椅子の後ろに回ろうとした私を睨み付ける。隣に戻るまで睨み続ける。目力半端ないです



『…あ、背後に気配があると怖いんですね』

「っ!!!!!!?」

『じゃあ、みんなと一緒に見ればいいのに…ほら、もうすぐ山場ですから』

「な、何を言う貴様、怖いなど誰が−…!!」

「後ろでござるぅぁぁあっ!!!!」

「っ!?!?!?」

『うわ、ビックリした』



真田くんが叫ぶから何事かと思えば、映画のクライマックス。主人公の背後に幽霊が迫ってるんだハラハラだね

まぁ、ハラハラしてるのは真田くんと政宗さんと…



『…大丈夫ですか、元就さん』

「…………ハッ」



私の肩をガッツリ掴んでいらっしゃる元就さんだけだ

我に返った彼は慌てて手を離すが、なんとまぁ可愛らしいんだろう。彼にも怖いものがあったとは



『大丈夫ですよ、あくまで作り話ですから』

「っ…………」

『ん−…あ、そうだ』

「っ!!!背後に立つなと言うたであろう!」

『違いますよ、元就さんの警護です』



私は彼の座る座椅子の後ろへ回り、背もたれの裏にもたれかかった

元就さんと背中合わせ、である



『背後は任せてください。何も出ないように見張ってますから』

「何を…!貴様ごときに守られる我でないわっ」

『えぇー…じゃあ私の背後を守ってくださいよ、それでお互い様です』

「貴様に我の相方が勤まると思うてか」

『そう聞かれちゃ自信持てないですねー、まぁ、何とかしてみせますって』

「…………ふん、応えてみせよ」

『はーい、』

「伸ばすでない」

『…………はい』






「おーい、雪子。てれび終わっ…て何処で寝てんだこいつ」

「毛利も寝てやがるな…おい雪子、でぃぶいでぃはどう止めるんだ?」

「やれ、三成も寝てしもうたか。つまらないとぼやいておったからなぁ」

「さ、佐助!厠に幽霊は出ぬかっ!!?」

「えぇー…怖いなら独眼竜についてってもらいなよ。怖がってたの二人だけだからさ」

「なんでオレが真田と−…!!まぁ、真田が怖いってんなら…」

「…………(笑)」

「笑うんじゃねぇ風魔ぁぁっ!!!!」







0930
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みんなでホラー鑑賞

 


mae tugi

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