You Copy?



※ポッキーゲームの続編


『三成、』

「はいっ………え?」

「ちょっと姫さんなにしてんのっ!!?」



猿の悲鳴に似た叫び声に全員がこちらを振り返る、その瞬間に固まった空気

それを壊したのは毛利であり、雪子様を抱えて私から引き剥がした



『うわっ!!?』

「何をしておる貴様はっ!!」

『な、なにって…乾燥チェックですよ』

「乾燥…?」



私を呼んだ雪子様を振り返っただけだった

瞬間、両頬が柔らかい何かに包まれグイッと雪子様のお顔が近づいてきた。彼女の瞳に映るのは…私の唇



『三成、やっぱり唇が乾燥してるよね。リップ一緒に買いにいく?』

「りっぷ?それはいったい…」



何でしょう、と問う前に蘇った記憶。りっぷという言葉を聞いたのはこれで2度目だ

そう、王様げぇむという遊びをした日。最後に私は雪子様と菓子をくわえて…




「っ!?!?!?」

「うぉっ!!?ど、どうした?」

「石田殿が真っ赤でごさる!」

「ぁ…!あれ、は…っ…!」

『行こう、三成』



困った顔で私に手を差し出す雪子様。しかし私はそんな彼女の口元から目を離せなかった







『んー…男の子がどんなリップ使うか分からないからなぁ…』

「………」

『ねぇ、色つきとかどうかな?三成はどんなのがいい?』

「い、え、そのっ…、…」

『…動揺しないでよ』

「も、申し訳ありませんっ!!!」



雪子様に連れられやって来た店。棚に列べられたりっぷを楽しそうに手に取る彼女

しかし私は、やはり雪子様を直視できなかった



『三成、あれは罰ゲームだったんだよ?悪いのはポッキーゲームを命令した大谷さん!』

「〜〜っ!!!」

『…そんなに嫌なら、逃げてもよかったのに』

「ち、違っ…!」




あの時、私は何が起こったのか分からなかった。私の顔に影を作ったのは雪子様、掠めた鼻先も触れた息もすべて彼女のものだった

そして…



− …ちょっと荒れてるね −


雪子様の言葉で、私たちの唇が触れ合ってしまったということが分かったのだ



「っ……あ、主に私はなんということを…!」

『そんな気にしないで。初めてなわけじゃないし、減るもんじゃないし』

「…そこは気にしていただきたいのですが」



幼い頃、雪子様は秀吉さまと初めて接吻をしたと聞く。それ以来、守られてきた貞操

唇を重ねた以前に私が雪子様を汚してしまったように思えて…いっそこの口を斬り落としてしまおうか



『めちゃめちゃ怖い心の声が聞こえたんだけど…ポッキーゲームはほら、お酒の場じゃよくあるし』

「っ……では、雪子様は他の者とも…!」

『してない』

「むぐっ!!?」



ペシリと私の口元が何かで軽く叩かれた。それは雪子様の持つりっぷ

これでいい?と問う彼女に私は黙って頷くしかできなかった







『…三成は真面目だね。それとも奥さんじゃない人との接吻はまずい?』

「〜〜っ!!!?」



店を出てやって来たのはどこかの広場、公園と呼ばれる場所だった

椅子に座りりっぷを出す彼女の隣で私は固まる。雪子様の口から“接吻”という言葉を聞くだけで駄目なのだ



「…雪子様は平気なのですか?」

『んー…私たち以外は知らないし、一瞬だったから。よし、三成こっち向いて』

「…………」



雪子様に言われ素直に振り向く。そう、彼女が忘れろと言うなら忘れるつもりだ

今の私にとって彼女の言葉は絶対。だが、簡単に忘れられるのは何故か悲しかった



『犬とか猫に舐められたと思いなよ。私じゃないよ、犬、犬』

「…貴女様は畜生ではありません」

『いや、そりゃそうだけど…あ、ちょっと唇出してね』

「ん………」



雪子様の手が伸びてきて、私の口にりっぷの先が触れてくる

ベタベタとした慣れない感触…女の口紅とよく似ていて、それを自分がつけているのかと思うと気味が悪い


…それよりも、雪子様が私にりっぷを塗っている。それが妙に…嬉しかった



『あ、三成の口元がいやらしい』

「なっ−…!!?」

『あは、口角が上がったよ。匂いが気に入った?』

「匂い…?確かに、少々甘い匂いが…」

『バニラだよ、私も好きな匂い。唇がかさつくと思ったら塗ってね』



握らされたりっぷに視線を向け、次にそれを雪子様に移す。そして彼女を見つめ続けていると、何事かと首を傾げられた


普段、香るのだ。隣を横切る雪子様からこれに似た甘い匂いが

あの日も顔を近づけてきた彼女から…




「私は…無かったことに、されたくはありません」

『へ?』



唇が荒れている、そう告げられた時に私の頭に小さな悔しさが生まれた

これが男としての自尊心なのか、唇が触れたことに動揺しない雪子様に…苛立つ。家臣として失格だ、だが




「…雪子様」

『う、うん…?』

「再び、挑戦させていただきます」

『え……』




真っ直ぐに見下ろす彼女の頬が、徐々に紅潮していくのが見えた






『お、大谷さん!三成に謀反宣言されました!下克上です!反抗期です!』

「ヒヒッ、三成は我慢強い子故。あまりおちょくると堰を切った時が恐ろしいぞ…ところで、何をした?」

『せ、堰を切ったら……貞操の危機っ!!?』

「ちと待て、マテ。まこと、ぬしら何をした?」


ガチャッ!!!


「貞操の危機とは何事ぞっ!!?」

『元就さぁぁぁんっ!!三成が反抗期ですぅぅぅっ!!!』

「・・・・」





20130102.
キリリクより
240000蒼月様
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三成は忠犬であり狼です


mae tugi

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